Division House Balnea

The Majestic Tumult Era "SS"

その1

「お、カーシュ。珍しいね」
「そうでもないですが。お疲れ様ですクリスト。…と、M3ですか」
「おー」
「何で上級武官用のバルネアに居るんですか…」
「家戻るのが面倒なんだよ、いいじゃねぇか」
「そうそう。風呂は垣根を越えるんだ。気にしたら負けだよ」
「珍しいというだけで気にしてはいませ―――、…飲酒禁止では?」
「細けぇな。お前も飲めよ、同罪だ同罪」
「…いただきますが。倒れても知りませんよ」
「冷やした炭酸水のほうが体には良いと思うが、M3は聞かないからねぇ」
「そんな上流階級丸出しの楽しみ方なんて飽きた。だいたい肩凝り直しに来てんだから、血行良くして何が悪い」
「悪かないけどね。そういえばカーシュこそ、本当にこの時間珍しいな」
「僕も家戻るのが面倒だったんですよ…。寮の風呂じゃ足伸ばせないし」
「…財力ある貴族のくせに」
「サウナまでついてるバルネアが一番近かったんだよ」
「この時間から帰ったとして、風呂用意してもらうまで待ってたら寝ますよ。連チャンで訓練に付き合っててボロボロなんですから」
「またバトロワ?」
「なんだそれ」
「部隊全員で戦って最後まで残った者が勝ちルール。正規訓練後のお遊びみたいなものだけど、カーシュが初めてから流行ってねぇ。いや、まいったよ。師団長でよかった」
「全師団勝ち抜きでもやればいいだろ」
「何の拷問ですかそれは。死人が出ますよ」
「名目でも訓練なんだから、部隊程度で限界だな。審判なら参加してもいいけど、直接参加は願い下げだね」
「…負けるからか」
「それもあるけど。私のスタンスじゃないんだよねぇ、汗臭くて」
「…失礼な」
「筋肉痛になりそうだし」
「………」
「だからカーシュはバルネアなんぞに通ってんのかご苦労さん」
「僕だって毎回やりたかないですよ。何故かあいつ等やりたがるんですよね。殆ど負けるのに」
「君もムキになって負けないからねぇ」
「手抜きなんてしてる場合じゃないんですよ。気をつけないと本気で怪我させる。本当、何でやりたがるんですかね、しんどいのに…」
「お前ぇが勝つとこ見たいからだろ」
「…は?」
「プレッシャーだねぇ。凡人でよかったな、私は」
「意味がわかりませんが」
「強い男には、負けても良いからそのまま強くいてほしい」
「…何ですかそれ気持ち悪い」
「筋肉馬鹿は羨ましいよな。俺んとこなんざ、みみっちい頭脳プレイばっかだぞ」
「天才と凡人の壁って高いよねぇ」
「その歳で赤天纏めあげといて何が凡人ですか」
「私は努力型なだけだよ。見せないようにこっそり頑張ってるのさ。君んとこの隊員の気持ちが少しはわかるしね」
「俺もその辺は学問的に解らなくもねぇが」
「…疎外感を感じます」
「ははは。君に求められていることは、部隊全員が束になったって勝てないという絶対強者のカリスマ性だよ」
「一気に重くなったんですけど」
「まあ、飲めや。若人」


その2

「クリスト!立看に署名付きで『貸切』って書いてあるんですけど、使っていいですか」
「カーシュか?君なら構わないかな。どうぞ」
「助かります。じゃあ、着替えて来ますんで」
「衝立からこっち来ないあたりが、あの子の育ち方よねぇ」
「そうだねぇ。悪ぶってても、貴族だ。カラケルサスの子育て術、また聴きに行こうかな」
「それ、アタシも連れて行きなさいヨ。クセルクス家の伊達男、近くで見る機会なんてそうそう無いんだから」
「妬けるなぁ。なんで同期なのにあいつがモテるんだろう」
「人徳ヨ。人徳」
「お邪魔します。バルネアの貸切ってどんな職権乱用で―――っうおわ!!」
「アラ〜。随分立派なモノお持ちで。良い物見たワ」
「そりゃ、どうも。―――じゃなくて!どうしてドナが居るんですか!女人禁制ですよ!?」
「あっはっはっは。貸切だからねぇ」
「別に隠さなくていいわよ軍人なんだから。見飽きてるわ」
「はぁ、別に隠すほどのものでもないんでいいですけど、一応礼儀として」
「…さらっと言うね、君は」
「しかし、どうしてドナが水着なんですか。ずるくないですか」
「私も言ったんだけどねぇ。いや、その水着もね、面積がけっこう凄いから、もうどっちでもいいんだけど」
「何よアンタ達、アタシのおっぱいがそんなに見たいわけ?」
「…殆ど見えてますよね、それ」
「ちょっと、何よその視線。ヴァルに言うわよ」
「……ヴァリアンテはもっと遠慮無くガン見しますよ、きっと」
「ま、ヴァルとは一緒にお風呂入るから、今更そうでもないわよ」
「…そうですか」
「ドナ!本当か、それは!聞き捨てならないんだけれど!」
「ちょと!クリスト!こんな近くでそんなもんぶらぶらさせないでよ見苦しい!」
「私だって隠すものは持っていないつもりだよ!けっこう良い仕事してるの知ってるだろう!?」
「黙れッ!張り合うな!いいから座る!歳を考えて!」
「………歳はさぁ、言っちゃだめだよねぇ…。歳はさぁ…、そんな畳み掛けるようにさぁ…」
「カーシュ、アンタもそんな今更タオルがっちり巻かなくても、見比べたりしないわよ」
「いえ、男ってけっこうデリケートなんで…」
「素人童貞が生意気言ってんじゃないわよ」
「………ヴァリアンテ以外に興味ないので、何とでも。…別に僕は」
「そんな肩落として強がられてもねェ。悪かったわよ。お姉様が少し虐めすぎたわよ」
「…ところで、M3はあんな隅っこで何してるんですか」
「…聞くな、カーシュラード。私達男の為に、聞いてやるな」

M3が標準サイズなだけです。


その3

「お疲れさまです」
「カーシュラード君、ちょっとそこ座んなさい!」
「…は?何ですかクリスト」
「忌々しいクソ餓鬼め…。君は自分の立場を何だと思っているんだ」
「誇りに思ってますが」
「だったら軽率な行動は慎むべきだと思わないか。兵士の規範足るべき存在なのに。嘆かわしい!」
「すみません、意味がわからない。湯に浸かっていいですか」
「駄目。ほんと白々しい…。君、今日は何度目の風呂だい」
「…えー、寝起き、……訓練後、今の三回目ですか」
「訓練後の間はなんだ、間は」
「いえ特に。」
「つるっと言うね。部下を口止めした私に何か賄賂でもくれる気にはならんのか」
「……は?」
「君んとこの訓練と、赤天が被ってたの解るだろう。どうしてシャワー室で盛るかな」
「丁度良かったので」
「…いい加減怒るよ、お兄さんも」
「クリスト、うちの父と同期ですよね。さすがにお兄さんは訴えられるんじゃないですか」
「赤天が諜報部の元締めって解ってるかな…?」
「すみません、発言には気を付けます。お父さん」
「それは嫌味かい?嫌味だろうね?未だに独身の俺に対する嫌味だろう若造、握り潰してやろうか」
「何処をですか。本性出てますよ。……解りました、冗談です詠唱は止めてください全裸で凍死は勘弁してください」
「おい、おっさん。本題からズレてるぞ。カーシュに言いくるめられてんじゃねえよ」
「おっさ…!初等部で童貞捨てたマセ餓鬼も黙んなさい!」
「うーあー…、……それ言うなよトラウマなんだぜ、…マジで」
「M3、何ですかその武勇伝。詳しく」
「カーシュ!君はもうほんとに!相手の事も考えろと言いたいんだよ私は!親衛隊のメンバーが公序良俗違反してるなんて泣けてくるよ…」
「まさか、身元バレるようなヘマなんてしてませんよ僕は」
「休憩中のヴァルを引っ張り込むならせめて執務室にしなさい!幸い『クセルクス将軍がシャワー個室に誰かを引き込んで淫行に耽っていた』程度しか報告されなかったからいいものを…。私の部下が口堅くてほんとよかった…」
「ヴァリアンテかよ…、アイツもアイツだ、あの悪魔。どうしてこうお前には甘いんだあのアホは」
「あの子はねぇ、苦労してるからか家族を大事にしててねぇ。カレンツの学術討論会とかにも、隠れてこっそり見に言っちゃう弟バカなんだよねぇ」
「…僕はヴァルだとは言ってませんが」
「君が浮気?そりゃないだろう。遠征でも右手と仲良くしてるって噂が立つくらいなのに」
「だよな。カーシュからヴァリアンテ取ったら何も残んねぇくせによ」
「……貴方達のそう言うところには、敬服します」
「反省したかな、お坊ちゃん」
「しました」
「最初から謝っときゃいいのによ。ほら浸かっとけ。全裸で正座はかなり見苦しい」
「で、シャワー室はどうだったんだい?燃えた?」
「………」

けっこう燃えたんだと思います。

 

その4

「うーん、いつ見ても触ってもいい感じだよね」
「実際肩凝るし服選ぶし大変なのヨ」
「持たざる者の嫉妬を集める言葉だなぁ」
「こればっかりはアタシにもどうしようもないケド、まあ、持ってるもんは使わないと勿体ないじゃない?」
「観賞用ってもっぱらの噂だけど」
「当たり前よ。そう簡単に触らせるもんですか」
「私はいい特権貰ってるよね。いやー、ほんとこれ気持ちいい」
「羨ましいならカーシュに揉んでもらいなさいヨ。おっきくなるかもよ?」
「……今更無理じゃないかな。っていうか、私が装備したいわけじゃないし」
「何よ負け惜しみ?胸囲じゃアタシの方が勝ってるものね」
「いいよ負けてて。あー、癒される」
「ン。ちょっと痛いわよ」
「ごめんごめん」

「カーシュ、君、何とかしてきなさい」
「無理です」
「野郎同士が乳繰り合うなんざ犯罪行為だやめてくれ」
「え、そっち?」
「ン十年吸っても舐めても揉んでもヴァルの胸はあのままですよ」
「…そっち?」
「そもそもクリストが怒るべきなんじゃないですか。自分の女の胸揉みしだかれて黙ってるなんてどんなヘタレを気取るつもりなんですか、今更」
「いや、最初は止めようかと思ったんだけどね、一応ね。何かアレはアレで目の保養というか、倒錯的というか、何というか…」
「じゃあなんだ。ヴァルがいいなら俺も参加してきていいのか」
「M3、あなた自分が女顔だってコンプレックスじゃありませんでした?標準男性以下だって肯定してるも同然ですよ?」
「埋めるぞカーシュ。」
「うん、M3は絶対だめ。君は紳士じゃない」
「沈ますぞおっさん」
「だって君、ヴァルみたいに無害じゃないから。水着の面積を遠慮せず、乳首摘むくらいやってのけそうだから、ホント絶対駄目。カーラ姫で我慢して」
「…お前等いい度胸だな」

ついにヴァリアンテ参戦。

  

2009/07/21 適時追加(最新その4 2010/09/18)

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