Apron

geter様以外の持ち帰り厳禁!! 如月 純様へ>>>19191hit

 規則正しい包丁の音がまな板を叩く。
 青銀の髪が肩口で揺れて、日に浴びてきらきらと乱反射させている。鼻歌でも歌い出しそうなほど、ジーベルスの機嫌がいい。
 一分の隙もなく着込んだ民族衣装の上に、割とルーズにひっかけたエプロン。
 まるで新妻だ。
「何見てんだよ?もう少しでできるから、これでも食べてな」
 微笑んで緑色に光る林檎を投げてよこした。受け取った林檎を囓りながら、それでも飽きずに彼の後ろ姿を見つめ続ける。
 知らずに、乾いた唇を舌で潤した。それはまるで獣が舌なめずりをしている姿に似ていた。
「髪、どうして切ってしまったんですか?」
「んー」
 背中まであった美しい髪が、今は肩口まで短くなっている。それを惜しいと思ったが、今の長さでも遜色ない。
「長い方が……よかった?」
 少し切なそうな声で。おや、と思ったペルシャバルは素直に自分の気持ちを告げた。
「いいえ、どっちも好きです。どんな長さだろうと貴方には変わりませんよ」
 その答えに満足したのか、ジーベルスは振り返ってにっこり笑った。
「一品サービスしてやろう」
 近寄ってきて、耳元にちゅ、と口付けた。
「…………」
 中天に差し掛かっている太陽が、窓から室内に降り注いでいる。そんなどこか牧歌的な光景の中にいながら、ペルシャバルはジーベルスを見上げた。上目遣いのまま林檎を囓る。囓った林檎から溢れた果汁を舌先で舐め上げて、意味ありげな視線を送った。
「………アンタ、結構ヤラシイよな」
「貴方限定ですよ」
「…昼飯つくってるからまた今度な」
 笑いながら眉根を寄せて、するりと挑発をかわしてしまった。
 面白くないな、と。せっかく機嫌がいい彼をこのまま食べてしまいたい衝動に駆られる。
てきぱきと見事なまでの手際の良さで動くジーベルスの後ろ姿を眺めながら、林檎を囓り終える。口の中に広がる甘酸っぱさを舌で反芻して、黙っていられなくなった。
 気配を不用意に動かさないようにそっと近付いて、髪の隙間から覗く首筋にキスをする。
「………っ!」
 持っていた包丁を取り落としそうになって、ジーベルスは慌てて握りしめた。
「ア…アンタ、なぁ!!」
 相当驚いたのか、空色の瞳を潤ませて、白昼堂々と悪戯を仕掛けた張本人を怒鳴りつけた。
「ひとが刃物持ってるときに何考えっ……て、……んっ…!」
 抗議の声を素早く塞いで、さらに深くまで舌を差し込み舌の根まで吸い上げる。一度見開いた瞳がぎゅと閉じられて、苦しそうに眉根が寄せられた。
 後ろから台所に押しつけられて、身をよじった体勢にジーベルスが苦痛に呻く。いつのまにか包丁も手放し、震える膝を支えるために流しの縁に爪を立てた。
「ふ…ぁ、…っ…」
 お互いの唾液を絡め合って、身長差であおのくジーベルスの喉に透明なそれが伝う。ペルシャバルがやっと解放すると、まるで名残のように唾液が糸を引いた。
 整わない呼吸のまま荒く息を付いて、ジーベルスは小さく喘いだ。余韻のように口腔内に痺れが残っている。
「貴方がそうやって無邪気に煽るたび」
「………誰、が」
「いちいち私を試しているのか、と」
「…………なんで」
 後ろから、首の付け根をきつく吸われて、鮮やかな痕が残る。
「怖い、ですか?」
 問われた言葉を、上手く理解できなくて、ジーベルスはびくりと肩を揺らす。
「震えて、ますよ?」
 くつり、と笑って、ペルシャバルはきっちりと着込まれた服のつなぎ目を外していった。そしてそのまま、乾いた手のひらを差し入れて、探るように愛撫する。
 切り刻まれたままの野菜を見つめながら、ジーベルスが悔しそうに息を吐いた。熱の混じったその吐息は、ペルシャの好意を甘んじて受け入れている。
「昼食作ってくれるんでしょう?手が、動いてませんよ」
「……な…?…こんな、こと……しなが、ら……?」
「腹、減ってるんですけどね。作れそうにないなら、先にこっちの空腹、満たしていいですか?」
「どんな…理屈だっ……それ…!」
 形ばかりの抵抗も、難なく押さえつけて、ペルシャバルは自分の腰を押しつける。台所と板挟みになっているジーベルスが、自身に当たる硬い物にひくりと息を詰めた。
「……昼間…からっ……!!」
 直にわからされた表現方法に、耳まで赤くなった姿が可愛くて、ペルシャバルは愛撫の手を止めずに耳を甘噛みした。
 殆ど服など脱がせずに、作り出した隙間から忍ばせた指が、吸い付くような肌を辿る。敏感な箇所に施された刺激にいちいち反応して、ジーベルスは艶混じりに啼く。
「昼だろうと、夜だろうと、関係ありませんよ。いつでも、ね」
「聖…炎霊って、……理性的な…生き物、だ…ろっ!」
「それ以前に男ですから、私は。美味しそうな貴方をそのままにしておく甲斐性なんて無いですよ。こんなシチュエーションで悪戯しないわけないでしょう?」
「…ゃ…あ、…そ…な……知ら、な…ぁっ……んっ」
 胸元から下へと下りてきた指先が、既に硬くなったそれに絡み付いて扱き上げる。
「……濡れて、ますよ?」
「ちょっ…、…あ、あっ……!」
「こっちも、欲しいんでしょう?」
 もう一方の開いた手が秘部へとのばされて、ぐるりと一周してから指を差し入れた。
「!…っ…、…あ……はっ……!」
 押し開かれる圧迫感に喘いで、少し前のめりに身を倒す。何時までも慣れない体奥の、一番敏感な部分をひっかいて、ペルシャバルは耳元で卑猥に囁く。
「すごく…熱い。…狭くて、食い千切られそうですね」
「うる…さっ……、…はっ……ぁっ」
 びくんと反応する肩から、エプロンの肩ひもが滑り落ちた。
「早く、貴方の、中に…………入りたい」
 一言一言切って、はっきりと情欲を込めて言葉を注ぎ込む。その即物的な物言いに、不慣れなジーベルスは耳まで赤く染める。
「……奥まで」
 こんな明るい時間と場所で乱れさせられて、それでも飛ばせない理性に縋り付きながら、ジーベルスは熱い身体を持て余しぎにみ首を横に振る。
「嫌がっても、駄目です。最後までしますから」
 ね?と優しく告げられても、ジーベルスにとっては同じ事だ。衣類の隙間から分け入ってきたペルシャバルの手が腰を引き寄せて、十分な硬度を持ったそれを宛う。
「……ゃっ……」
「入れ、……ますよ?」
「あ、……っ……や、…んっ……、ぃっ……!!」
 中途半端に慣らされて狭いままのそこがぎっちりと埋められて、ジーベルスは生理的な涙を漏らす。快楽よりも苦痛が多くて、ゆるゆると埋め込まれる所作に耐えるのが精一杯だった。
 立ったままでの暴挙に、体重を支えきれない腕が震える。拒むことなく受け入れる身体が恨めしくて、ジーベルスはせめて息を殺す。
「狭い……」
 覆い被さるように後ろから抱かれ、舌で舐め上げる音と一緒に掠れた低音が囁かれる。
 ぐ、と最後まで埋めてしまってから、声を出すまいとするその唇に指を差し入れて、歯列を割って舌を捕らえる。そしてそのまま、律動はせずに揺する。
「…ぁ…ふっ……っ…、………んっ…」
「痛くは、ないんでしょう?」
 痛くはない。苦痛ではないが、わざと自覚させるように揶揄する動きと言葉でもって、ペルシャバルは煽って行く。
「な……でっ、……こんな…ぁ……っ…」
 口内に浅く愛撫を繰り返す指が濡れた感触を伴って、顎を伝い、喉をくすぐる。そのまま、はだけた衣服の間を縫って滑り込んだ指が、胸の突起をひっかく。
 途端にきつく締め付けられて、ペルシャバルは喉の奥で笑った。
「……溺れそうです、よ……?」
 一度ぎりぎりまで腰を引いて、同じ勢いで打ち付ける。幾分滑りの良くなったそこを一定の早さで擦り上げ、そのまま腰を引き寄せて獣みたいに。
 もう覚えてしまった一番の性感帯を抉りながら、いっそ凶暴そう唸る。
「貴方に…。いつも、……ね」
「…ひっ…ぁ…あ、あっ……んっ……はっ…っ…!」
「ねぇ、ジーベルス…。…中に、出しても…いいですか……?」
 くすくすと笑いながら、既に言葉さえ継げないジーベルスに尋ねる。低い微かな笑い声と、卑猥な粘着音に聴覚まで犯される気がして、聖水霊はひくりとしゃくり上げる。着いていけなくなった快感を追うことしかできなくて、支えられてなければそのまま崩れ落ちそうで。
「答えて、くださいよ……」
「……ん、…やっ…ぁ…」
「……ジーベルス」
 催促すると、
「……ど…でも、……い…からっ……!」
 解放を許さないようにきつく戒められていて、わざと聞かせる濡れた音が酷く残酷だった。
「早…っ………く…!」
 舌足らずの言葉で強請られて、ペルシャバルは一際鋭く穿った。
 お互いに追いつめ、追いつめられ。
「中……絡んで…溶けそう、ですね…」
「あ、…あっ…、ペル…シャ…ぁ…!!」
「…すごい」
 感嘆と。
 それから、甲高い嬌声。

***

 一瞬、確かに意識が飛んでいた。
 喘ぐ喉に口付けられて、目を開ける。
「…っ……アンタ………」
 疲れ果てたしかし濡れた声で、非難する。床に崩れ落ちたくとも、未だ抜かれていない所為でそれも叶わない。
「はい?」
 喜々とした声が事後の愛撫の合間に。
「うるさいよ」
「……はい??」
「も…い…から。…どけよ」
 陰険な口調があまりに険悪で、ペルシャバルは素直に言うことを聞いた。
「………ンっ…」
 引き抜かれた刺激に小さく啼いて、支えを失った身体は地に崩れる。
「さっきの、うるさいって何がですか?」
「……………いちいち」
「いちいち?」
「最中に、うるさい」
 事後の余韻と羞恥に頬を染めながら。
「………ああ」
 やっと思い当たったペルシャバルは、優しく微笑んでひっかかったエプロンを外してやった。きっと立てないジーベルスは、このまま昼食なんか作れない。
「だって、私が聞くたびに、貴方が反応するんで。つい、悪のりしてしまうんですよ」
 ちゅ、と音を立てて口付けして。
「………………………馬鹿か?」
 潤んだ瞳で告げてもきっと堪えないだろうが。
「貴方限定ですよ」
 身体を繋げる前に囁いた物騒な台詞を吐いて。
 ジーベルスの二の句を奪った。 

  

19191HITのキリ番を踏んでくださった如月 純様様に捧げます!
「経験者という名のオヤジなペルシャバルで、ジーベルスに悪戯」というリクエストでした。あれ、いつのまにかエロに(笑)!!
新婚さんはキッチン。を王道的に踏襲してみたのですが、気付けばいたしてました。もうすこし色々とセクハラするはずだったんですが、最近エロ書いてない反動がいきなりきました(笑)。ごめんなさい。書いてて楽しかったです。言葉責めもセクハラにはいりませんでしょうか?
実に余談ですが、ジーベルスが髪切ったのは、レギアノーマが長髪だったので、ペルシャが未だに引きずってるかと危惧したからです。前の女に未練残してたら別れてやるぞ、と。作品内では書きませんでしたが…。乙女かお前わ、と、つっこんでみる。
御来訪感謝!!
2003/9/23

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