It takes two to make a quarrel.

geter様以外の持ち帰り厳禁!! たまりゃん様へ>>>222222 hit

「親愛なるカグリエルマ」
 その手紙は、美しい字で綴られていた。

 その日、カグリエルマは客間の一つで眠りについていた。
 ニュクスの城はその空間の中に収まっているのが不思議なほど様々な部屋があった。食堂や客間、ロビーにテラスにホール。その全て完璧に掃除が行き届いているが、メイドの類は見かけなかった。
 爵位を持った魔物達は城へ入ることを許されている。大体において城下に屋敷を持っているが、城で生活をする者もいる。上流魔族達が憩う場所としては城は最適だった。出入りが自由である場内には客間の数も多く、特定の場所を好む者もいればその都度別の場所を使う者もいる。カグリエルマはそんな客室の一つを使っていた。
 いつも最上階で生活しているカグリエルマが、何故客室等で寝起きをしているのかと言えば、この城の主の顔が見たくないというそれだけの理由だった。
 自然と目が覚めて、ランプの火がそのままになっていることを確かめる。弱く設定していたそれを通常に戻して、寝る前にはなかった物を見つけた。
「手紙…?」
 手触りの良い上品な封筒を裏返せば、しっかりと封蝋がおしてある。宛名は無いが、自分宛で間違いないだろう。しかし、自分に気配を悟られず手紙を置いて行くような相手は限られている。まさかメリアドラスかと思ったが、吸血王が手紙をしたためている姿など想像が付きにくくて考えを取りやめた。
 唸っていても仕方がないので、カグリエルマはさっさと封を切って中身を取りだした。

「親愛なるカグリエルマ
貴方が好奇心を持っているのなら、
大通りの『バンシー』で待っています。
誓って危害を加える事はありません。
ただ、ほんの少し話し相手になって欲しいだけ。
M」

 差出人はイニシャルだけを残していた。名前の頭文字だろうか。Mがつく名で咄嗟に思いつくのはメリアドラスとメフィスト。だが、そのどちらも自分を呼び出す理由がないから赤の他人だろうと考える。
 何かの罠か。だが、不思議なことに危険な雰囲気が微塵も感じられなかった。それはきっと、柔らかい字体であるとか、上質の紙であるとか些細なことだがとても重要なことで、カグリエルマは着替えてからすぐに『バンシー』へ行こうと決意した。
 何着か部屋へ移動させていたフロックコートを取りだしてベッドの上へ、同じくクローゼットからシャツを抜き取って手早く着替えていく。アスコットタイを閉めてから、髪を結おうと櫛を手に取った。適度に梳き流して三つ編みにすれば完成だ。
 姿見で全身を見つめ、おかしな所がないかと確認する。誰に会うか判らないのだから、そこそこ見栄えのする恰好をしようと思っていた。実際ストイックなスーツ姿になったカグリエルマはお世辞抜きに華麗ではあった。光沢有る黒地に銀のストライプが入ったフロックコートには、橙色の髪が良く映える。
 自分の姿がおかしくないことを確かめ、剣帯を巻いて細身の剱を身に付けた。メリアドラスから与えられた魔人のひとりであるという魔具を帯びる事に少々抵抗を感じたが、もし何かあったとき身を守るのはこれだけだから仕方がない。
 時計と小物をポケットに入れ、カグリエルマは部屋を出た。鍵をかける必要はなかった。
 城の正門を目指して階段を下りていく途中、食堂の入り口からメフィストが顔をだした。手招きされるまま食堂へ行って、コーヒーと砂糖の乗った甘いパンをつまみ食いした。この食堂には、必ず何かしら食べ物があるのだ。
「おぬし、何処かへ出かける途中か?」
 ふわふわとプラチナブロンドをカールさせたメフィストが大きな瞳を爛々と輝かせて尋ねた。
「手紙がきててね。面白そうだから行ってみる―――…ああそうだ。メフィ、これ誰かわかるか?」
 カグリエルマはフロックコートの内ポケットから手紙を取りだしてメフィストに見せた。途端少女の顔色が変わる。それは小さな女の子が憧れの人を見つめるような、何処かうっとりとした表情で、カグリエルマは純粋に興味が惹かれた。
「メフィ、知り合い?」
「とんでも無い。畏れ多くもわらわがお会い出来るお方ではないわ。おぬしが羨ましいくらいじゃ」
 どうやらこの手紙を出した主は、結構な地位にいるらしい。
「何故あのような場末の酒場なんぞを指定するのか判らぬが、おぬし、粗相のないようにするのじゃぞ」
「危険なわけじゃないんだな?」
 念を押して問えば、「戯け者が!」と後頭部を殴られた。
 そうやってカグリエルマは、恋する少女じみたメフィストに送り出されながら城を出た。メリアドラスに何も言わず、というよりメフィストに自分が何をしに言ったのか口止めすることを忘れてしまった事に途中で気が付いたが、後の祭りだった。


***

 『バンシー』とは、バーの名前だ。
 カグリエルマがこの世界へ初めて足を踏み入れ、そして初めてメリアドラスと出会った場所でもある。そのバーは規模としては大きな部類に入り、下級の魔物から爵位を持った高位吸血鬼まで混在して酒の飲める珍しい場所だった。
 大通りに面していて城からは一本道であるから、カグリエルマはごくたまにそこへ出向いたりすることもあった。だが、メリアドラスが側にいれば酒場へ繰り出すこともあまりない。彼の側にいればもっと良い酒が飲めるし、何よりメリアドラスが酒場へあまり行きたがらないからだ。
 だがカグリエルマは元来の性格か、時折忘れた頃に酒場へ出かけていた。酒場の客達は人間であるカグリエルマを一瞥して、その殆どが放っておく。彼がこの世界の支配者である吸血王の唯一大事にしている物だと知っているから。だが当のカグリエルマは、酒は楽しく飲む物だと言って、初対面の客達と仲良く杯を交わして思う様騒いでくるのだった。
 そんなわけで、カグリエルマは勝手知ったる道を歩いて危機感もなくバーの扉を押し開けた。
 扉を開けた途端聞こえてきた獣の声や人間の笑い声はいつもと変わりない物だった。繁盛している店内をぐるりと見渡せばいつもと変わりない喧騒にカグリエルマは眉を顰めた。目新しい人物が居るとすれば、獣よりも敏感な魔物達がいつもと同じであるわけはない。
 嵌められたかな、と落胆しかけたとき店の一番奥に見慣れない銀髪を見つけた。
 俺を呼びだしたのはあいつだろう。カグリエルマは確信した。知っている奴なら手紙で呼び出すわけないし、メフィストが頬をそめる位だから醜い奴ではないだろう。
 カグリエルマは迷い無く歩み寄って、その人物を見下ろした。
「俺を呼んだのはアンタ?」
 貴族かジェントリの様な品の良いフロックコートは、酒場に似つかわしくはなかった。明らかに異人。
「今日は、カグリエルマさん」
 長い銀髪がさらりと揺れ、にこり花が咲くように微笑んだ。良く通る美しいアルト。メフィストより幾分濃いめの紫色の瞳、すっと弧を描く眉と薄く形の良い唇。人間でないことは薄々気が付いていたといえ、その美しさはまるで身震いがしそうなほどだった。
「どうも。初めまして、だよな?」
 美しい顔に慣れてしまったというのも考え物だが、カグリエルマは物怖じせずに手を差し出した。相手はくすくすと笑いながらカグリエルマの手を握り返し、空いた椅子を勧めるように手を差し出した。
「ええ。改めて初めまして。もしかしたら来ていただけないかと思いましたが、会えて嬉しいです。私のことはミストとでも呼んでください」
 こんな美人のお誘いだったら願ったりだね、と軽口を叩きながら、カグリエルマはウィスキーを頼んだ。氷とボトルを置いていったのを見計らって二人は乾杯した。
「メフィストがな。アンタの保証をしてくれた」
「ああ、あのお嬢さんですか。―――でも、メリアドラスを連れて来てくれなくて、良かった。…今あの顔を見るのは少し腹が立ってしまう」
 微苦笑で髪を掻き上げる姿は随分と艶っぽい物があった。まさかメリアドラスが目の前の人物に手を出したのかという思いが一瞬よぎったが、あいつにかぎってまさかそんなことはないだろうと思い直す。
 それでも、幾分声を細めてカグリエルマは聞き返した。
「あいつ、何かしたのか?」
 そのちょっとした変化に目敏く気付いたミストは、宝石のような瞳を見開いた。
「いいえ、彼に何かされたわけでは……ああ、貴方は私について何も知らないんですね」
「メフィストが大絶賛してたくらいしか、な」
 するとミストは納得したというように頷いて、ほっそりした指でグラスの淵をなぞった。
「零世界を知っていますか?」
「……ああ、話を聞いた程度だけれど。メリーの実家だろ」
 ミストは小さく吹きだした。吸血王と名高い魔族を愛称で呼んでいる事に笑い、そして零世界を『実家』と言わしめたその度胸に。
「私はその世界から来ました。…いつだかアレが貴方に手を出そうとしたそうで、申し訳ありませんね。一応、多分、彼なりの息子に対する愛情だと言えなくもないので…」
「アレって…、メリーの父親?」
「当たりです。私はメリアドラスの父親に中る者の部下になります」
 ふむ、軽く納得してから、カグリエルマはニヤリと笑って見せた。
「……ただの部下?」
「どうして?」
 質問には素早く質問で返された。
 二人はお互いに瞳を細め、互いの容姿を黙って見つめる。
 ミストの方がカグリエルマよりほっそりとしているかもしれない。だが、スレンダーな肢体はほぼ変わりなく、女の骨格には見えないが見事なバランスを保持していた。一番目を惹く顔の美しさにしても、もし二人が女性で有れば国の一つを落とすのさえ簡単にできるだろう程だ。綺麗と呼ぶに、相応しい。
 輝きを放つ銀髪に濃紫の瞳を持ったミストが静の美しさだとすれば、橙色の髪に銀色の瞳を持ったカグリエルマはさながら動の美しさ。
 配色こそ違えど、容姿のタイプは何処か似通っている。
「メリーがな、『好みのタイプは同じだ』とかほざいてたのを思い出した」
 どうやら同じ様なことを考えていたのだろう、ミストは苦笑を深くする。
「成る程。聡いですね。話が早くて助かります」
 二人はお互いに笑い合った。カグリエルマは最期に残っていた警戒心を薄めて、グラスを軽く持ち上げる。それに倣ったミストのグラスと澄んだ音を立てて打ち合わせた。
 意気投合することができた二人は、暫く酒を傾けて下らない話をしていたが、カグリエルマは懐から手紙を取りだして、テーブルの上を滑らせた。
「『話相手になってほしい』って、下衆な勘ぐりをしてもいいか?」
「どうぞ?最も私も、丁度貴方が同じ様な状況下にあると思ったので呼びだしたんですが」
「………」
 食えないな、とは二人の胸中。先に溜息を付いたのはカグリエルマの方だった。
「原因は何よ。大方同じ境遇の俺に愚痴りにきたんだろ?思う存分愚痴ろうぜもうこうなったら」
 グラスにウィスキーをつぎ足してやり、カグリエルマは肘を付いた。
 そういう込み入った話をするのに、酒場というのは実に適した所だった。喧騒に紛れてしまえば、話が聞こえる範囲はお互いだけになるし、カウンターを避ければ店員の目も気にならない。
「改めて話すとなると、馬鹿らしく思えてしまうのが不思議ですね。激情に駆られただけかと情けなくなりますが…」
「…痴話喧嘩っつーのはそういうもんだろうよ。実際俺もそうだ」
 相手が理不尽に思えて喧嘩をしてしまった場合、手っ取り早いのが気分転換か愚痴を吐く事だ。もやもやしてしまった思いを吐き出してしまえば、案外仲直りは簡単だったりする。……本人の性格にもよるが。
「どうしようもなく浮気性なんですよね…」
 腹を決めたのか、ミストがぽつりおぽつりと話し出した。
「…アンタが?」
「まさか。私が浮気をしたことはありませんよ、悔しいけれど」
 なまじメリアドラスの直情的な性格を知っているので、その父親である人物が浮気性だと咄嗟に思いつかなかった。が、実際自分も襲われかけた過去があるので、それもそうかと思い直した。
「浮気ってさ、された方にも問題があるとか言うけど、正直アンタには問題なさそうだよな。お相手の悪口言うようで悪いけど」
「お構いなく。私だって、アレは単に遊びだと判ってはいるんですが…。結局は私にもどってくるので」
「いや、それでもムカツクもんはムカツクだろ…」
 話しぶりで、浮気の回数を聞くことすら馬鹿らしく思えて、カグリエルマは取り敢えずウィスキーをつぎ足すことを頑張った。
「で、三行半を突き付けて家出してきたわけ?」
「そう言われると本当に情けないですね…」
「気にしないでくれ。俺も同じ。無駄に抵抗してるから。―――浮気じゃないけどね、こっちは」
「許す許さないの問題じゃあないんですよね…。どうせ許してしまうんだから。ですが、余り頭に乗られてもこっちの示しがつかないので、少々懲りていただこうかと思いまして」
 なぜこの世界に来たのかと言えば、ミストが怒って出ていった先が、主であるノイズフェラーの息子が収める世界だからだ。ノイズフェラーにまったく関わりのない世界ならば、彼はそれほど焦らないだろう。だが、ことメリアドラスが絡むと彼は途端に関心度を高める。
「メリアドラスに迷惑がかかるでしょうね…」
 ミストは小さく呟いた。まるで独り言だったが、カグリエルマは聞き逃さなかった。
「自分の親父の恋人だから?」
「いいえ。その点メリアドラスは特に気にはしてない様なので。あの同じ顔で随分と気の利く性格をしていて、訳もなく笑えてしまうのですが。―――一応私はメリアドラスに気付かれないようこの世界に御邪魔しましたが、アレにはしっかりバレているので。私がここに居座ってしまえば、恐らく邪魔しに来るでしょうから」
「ああ、そう言うことか…。メリーは親父さんのこと嫌ってるから?」
 問いに、ミストは頷いた。メリアドラスがノイズフェラーを嫌悪するのは、同族嫌悪もあるのだろうとミストは推理していた。メリアドラスは情を大切にしているが、基本的な残虐性や独占欲や支配欲の強さは同じである。
 カグリエルマはグラスに口を付けながら、ミストという人とナリがほんの少し判ったような気がした。自分勝手でこの世界に来たと判っていて、メリアドラスの心配をしている。恐らく地位のある魔族であろうに随分と気の優しい事だ。
「口に出してみて、どうやら私の愚痴なんて大したことが無いという事が判りました。すぐに戻る気はありませんが………馬鹿らしいですね」
 どうやら自己完結を導きだしてしまったミストに、カグリエルマはまあまあと肩を叩きながら酒を注ぐ。
「そういえば先程から気になっていたのですが」
 ミストは視線を落としてそう切り出した。
「腰のそれは、レラジエですか?」
 視線の先にはカグリエルマの剣帯に吊られた細身の剣があった。
「……判るもんか?」
「ええ。元はノイズ―――失礼、メリアドラスの父が従えていた魔人のひとりです。実は貴方が店に入ってから、私のことを随分と警戒している。随分貴方を慕ってますね」
「手入れは欠かさないからなぁ…」
 子供をあやす様な仕草で剣の柄を撫でた。
「普通の剣を持たせてくれと頼んだら、心許ないと言われてさ…。元々は弓矢を扱う方が得意なんだけど、四六時中弓なんぞ持ってる訳にもいかないし、それでも習慣ってのは抜けなくてね。剣を持たせてくれって頼んだら――…それまで帯剣する事すら駄目だったんだぜ。まあ、それで、俺がごねたらこれを貸してくれたって訳だ」
「愛されてますね」
 さらりと述べられた言葉にカグリエルマはテーブルに突っ伏した。言われて嬉しいが恥ずかしい言葉ではある。
「魔人ひとりで、一つの国を壊滅させられるくらいの力は有りますよ?確かメリアドラスは6体ほど魔人を使役出来ていたと思いますが、そのひとりを与えるのは並大抵の信頼度ではありません」
「……まじか」
 決して何も言わないメリアドラスから実はそんな大層な物を与えられていたと知って、カグリエルマは改めてまじまじと剣を見つめた。柄に填めこまれた宝玉が自慢げにきらりと光った。
 目の前で優雅に酒をあおる人物は、自分より様々なことを知っているのだろう。メリアドラスを敬称略無く呼び捨てられる所から、きっと彼は吸血王より上の地位にいるに違いない。
 自分は随分と人間街道から外れた人生を送っているな、と感慨に耽っていれば、メリアドラスと喧嘩になった原因を思い出してしまって眉間に皺を刻んだ。
「貴方がメリアドラスと不仲になった原因は?」
 渋い顔をしたカグリエルマを目敏く見抜いたミストは、遠回しな言葉も使わずに直接尋ねてきた。
 カグリエルマは小卓に突っ伏したまま視線をぼんやりと宙を睨んだまま唇を開いた。
「『俺の寿命は何時なんだろうな』って聞いただけなんだけどな。冗談で」
 その言葉に、ミストは目の前の人物と同じように渋い顔をした。ミストは少なくともメリアドラスがどのような性格をしているのか知っていた。恐らく、心臓が凍るような思いをしたのだろう。これはメリアドラスだけが悪い訳ではないだろうと、思わずお節介じみた弁解を思いつく。はたして自分が告げてしまって良いものかと考えたが、メリアドラスの性格ではろくな説明もしなかったのだろう。それではお互いに不憫である。
「カグリエルマ。それは酷ですよ。何せ貴方は既に生きては居ない」
「………は?」
 ミストが告げた言葉に、カグリエルマは顔を上げた。まさかそんな事実を突き付けられるとは露ほど思って居なかったのだ。
「その身体で一体どれほどの時を生き、どれほどメリアドラスに抱かれました?私が見るだけでも、貴方は立派に人間としての『生』を全うしていない」
 事実、カグリエルマがこのニュクスで生きた時間は長かった。自分の知り合いであった者達は年老いてしまったのに、カグリエルマは変わることなく生きていた。故郷を棄ててからも、何度か様子を見るために生まれた街を見に行ったことはあった。だが既に姿形の変わらない自分が安直に姿を見せられる事は無くなってしまっていた。
 確かに、その姿を見たらかつての友人達は彼を人間ではない物と見るだろう。しかしカグリエルマは、時の概念が存在しないニュクスでは人間として時が止まっている物と考えていたし、もし故郷に戻ったとしても止まった時を進ませるだけだと思っていた。メリアドラスに吸血を貰ったわけでも、魔に染まったわけでもない。目に見えて変化を感じなかったので、自分は人間のままであると思っていた。
「……俺は既に、死んでいるってことか?」
 声は低かった。震えていなかっただけマシだろうか。
「いいえ、死んでいる訳ではありません。ただ、人ではない。言いにくい事ですが、貴方が人間の元へ戻ったとしてもメリアドラスが居なければ長く生きていることは出来ないでしょう。―――長くと言っても数十年は平気でしょうが…。人として老いる事はないでしょうね」
「…参ったな。言葉が出ない」
 自嘲気味な言葉に、ミストは後悔した。やはり自分が告げる事ではなかった、と。
「私たち魔族から見れば、ほんの小さな差異でしかありません。ですが、人間から見れば既に貴方は人ではない。貴方は人間である事以上に『魔』の侵蝕を受けてしまった」
 カグリエルマは黙っていた。氷がグラスに当たり、澄んだ音を立てるのを聞いていた。
 衝撃的な事実を突き付けられたのだが、メリアドラスを憎いとは思わなかった。ただ少し悲しいな、とカグリエルマは薄く笑う。人間のままで居たいと願ったのは自分だ。メリアドラスはきっとカグリエルマが望めばその眷属へ加えてくれるだろう。だがカグリエルマは自分が人間であるからこそ出来ることがあるのだ。
「こう言うとメリーが嫌がるんだが…」
 カグリエルマはぽつりと漏らした。
「俺は『餌』で居ることが気に入ってるんだよな」
 吸血王はその名の如く、人の血を吸う。人間の生気を食べる事もできるが、人食いである吸血鬼は血を好んだ。しかも吸血鬼は下級魔物などからは血を吸ったりすることはない。吸血鬼同士と言うのならば別だが、主な食材としては人間を選んで居る。
 高位の吸血鬼で有れば暫くの間、血液を摂取しなくとも生きていける。だが、渇きを覚えたときに潤していられるに越したことはない。
 カグリエルマは唯一メリアドラスがその血と生気を補充する糧だった。餌は餌なりに優越感という物がある。その立場じゃ無くなったからといって、この関係が崩れるわけでは無いだろうが、それでもカグリエルマは落胆を隠せない。
「……済みません。私の説明が悪かった」
 肩を落としたカグリエルマが余りにも可愛く思ったミストは、ふわりと笑いながらカグリエルマの手を取った。人に相応しい血の通った暖かい手を。
「確かに貴方は魔に染まりかけていますが、私たち魔族にとっては『人間』と変わり有りません。むしろそうですね……、私から見れば貴方は随分と美味しそうですよ?」
 これで慰めになるだろうか。冷や冷やしながらカグリエルマの表情を窺えば、彼は複雑な顔をしていた。
「…アンタに旨そうって言われてもなぁ」
 微苦笑はいくらか気分が浮上してきた事を示すのか、ミストは少しだけ安堵した。
「メリアドラスは吸血鬼といえど、あれで立派に魔王の血統ですからね。一度決めた獲物は決して逃しませんよ」
「……アンタの相手みたいに?」
 ミストは言葉に詰まった。片目を瞑って笑って見せたカグリエルマに、ミストは肩を竦めた。まんまと言いくるめられてしまった。
「私も強ち貴方のことは言えないんですよ、本当は。純粋な魔族じゃありませんから」
「うわお。問題発言だな―――俺が聞いちゃっていいのか?」
「構いませんよ。貴方が気に入ってしまったので。私はね、元々魔族と対極の位置に居たんです」
 カラン、と氷が音を立てた。
「魔族と対極って、まさか人間だとか言わないよな?」
「人間は魔族と天使の中間に当たるんじゃないでしょうか」
 まさか、天使だったのか?と、カグリエルマは瞳を見開いて近付いてきた。ミストは微笑を浮かべることで肯定し、グラスを空けた。
「……なんで魔族なんかになったんだ?」
 それはきっと純粋な疑問なのだろう。カグリエルマは好奇心を隠せずにいた。
「メリアドラスの父に堕とされて。―――私もそう望んだのですけどね」
 もう随分昔の話になりますよ、なんて微笑まれれば、カグリエルマは身を乗り出したテーブルから身体を引いて椅子の背もたれに身体を預けた。
「…惚気られた気分だ」
「………それは失敬」
 言ってみればミストにとっても気恥ずかしかった。まさか自分が惚気る日が来ようとは皆目思いつかなかった。きっとお互いの相手が、特殊だからだろうと無理矢理納得する。
 カグリエルマは氷で薄まったウィスキーを眺め、目の前に座る美しい魔族を見つめた。暫く考えてから独り言のようにぽつりと言葉を漏らす。
「メリアドラスに、謝った方がいいよなぁ…」
「もし貴方に非があるのならば」
 ミストは至極簡潔にそう答えただけだった。
 『俺の寿命は何時なんだろうな』。会話の途中で呟いた、冗談めいたその科白に、メリアドラスの顔色が変わったのを覚えている。何処か怯えたようなその表情に、カグリエルマは問いつめずには居られなかった。しかしメリアドラスは何も言わずに首を振るばかりで。
 理由も判らずに何かを隠されてしまった苛立ちに任せて、暫く距離を置こうと考えた。メリアドラスは、最愛のカグリエルマが人で居たいと願う事も、なぜ人で有りたいのかという望みも理解していた。だが、既にカグリエルマが人間の枠を越えてしまったことを告げる勇気は無かったのだろう。
「馬鹿だなぁ…あいつ。俺が怒るとか悲しむとでも思ったのかな」
「思ったんじゃあないですか?」
 実際ミストに告げられた時は、酷く衝撃を受けたのだが。
「あいつに与えられた物で、怖れる様なことは何一つないのに」
 組んだ指の上に顔をのせ、愁いを帯びたような表情で呟く姿は、随分と艶めかしかった。ミストはくつりと喉で笑って、カグリエルマを流し見た。
「…惚気られた気分です」
「………そりゃ、失敬」
 同じ会話を繰り返した二人は、顔を見合わせてから、声を出して笑った。

 この世界は賑やかですね、とはミストの言だ。
 二人でボトルを一つ空にして、漸く酒場を後にした。中途半端な人間と元天使であるらしい魔族の二人は、足を使って城へと向かう。
 暫く厄介になろうか、とミストが笑いかければ、カグリエルマは大層喜んだ。カグリエルマは久しく出来た友と呼べる存在を純粋に喜んでいた。身分も種族も違うけれど、共感する部分は多くあって、恋人とはちがう愛しさのような物すら感じていた。
「城内はメリアドラスの結界ですからね…。私が無理矢理入ろうとすれば彼はあまりいい顔はしないでしょう」
 幾ら見知っているとはいえ、魔族が他の魔族のテリトリーに侵入されるは嬉しいものではない。
「俺が呼びに行こうか?」
 城下には宿屋の類が無いので、まさかずっと酒場に居座ってもらうわけにもいかず。言ってはみたものの、メリアドラスを呼びに行くと言うことは、有る程度話を付けなければならないという事で。
 どうしたものかと開かれた城門の手前で立ち止まっていると、上部から少女の叫び声が聞こえた。驚いて上を見上げれば、テラスからメフィストが顔を出していた。しかしそれも一瞬のことで、プラチナブロンドの残像を残してすぐに頭がひっこんだ。一体どんな早さで下りてきたのか、次の瞬間には正面の階段を駆け下りてくる。
「……ようこそ、いらっしゃいました!!」
 息を切らす吸血鬼というのは珍しい。メフィストは尖った耳を赤く染めながらスカートの端を摘み、王女のような優雅さで一礼した。
「随分久しぶりです、メフィスト公。相変わらずお美しい」
 ミストは微笑を浮かべながらメフィストの小さな手の平を取り、その指先に口付けをする。カグリエルマはその一連をまるで大道芸でも見るような目つきで眺めていた。
「スゲェ。メフィが真っ赤になってる」
 笑いが止まらない。歯を食いしばって笑い出すのを堪えていると、つかつかと近寄ってきたメフィストに思い切り足を踏まれた。
「ミスト様に立ち話をさせる訳にもいかぬ。おぬしも笑っていないでさっさと城に入るがいい!」
 照れ隠しなのだろうか、その口調は怒っているようだった。
「わらわが招待するという形でならば、ラス様も文句は言わなかろう。―――ミスト様、お手を」
「助かりますよ、メフィスト公」
 ミストはメフィストの手をとって、堂々と城門をくぐった。そのまま客室へと案内するのに二人は手を繋いだままで、まるで兄妹みたいだとカグリエルマは笑いを堪えるのに必死だった。あのメフィストが浮き足立っている。
「しかし、いくらわらわの招待とはいえ、ラス様に何も言わず、と言うわけにもいくまい…」
 客間に落ち着いてから一番にメフィスト。ちらりとカグリエルマを振り返るのは、彼女なりに気を使っているのだろう。
 カグリエルマとしては、どうせメリアドラスに謝りに行かねばならないのだから、それが今でも後でも構いはしない。
 唇に指をあて、考え込んでいたミストもちらりとカグリエルマを見つめた。だがその視線はメフィストのものと大分違うものだった。
「メリアドラスをすぐに呼び寄せる方法がありますが…。ついでにいらぬ者も呼びそうですけど」
「どういうことだ?」
「大方、メリアドラスは拗ねているのでしょう?だとしたら一発で仲直りさせてあげられそうな方法があります」
 その瞳は、どこか悪戯めいていて。カグリエルマは二つ返事で頷いた。元来悪巫山戯は大好きだ。メフィストは一体何をするのかと黙ってやり取りを聞いていた。紅茶の葉をポットに入れてお湯を注ぎ、蒸らしている間の事だった。
 カグリエルマの心境としては、手品に心を躍らせる子供の気持ちだった。驚いたりはするだろうが、自分に危害は無いだろうと言うまったくの無防備で。
「失礼しますよ」
 ミストは苦笑と共に呟いた。カグリエルマの側に近付いて、つい、と指で顎を捉えた。
 次の瞬間、カグリエルマとメフィストは動きを止めた。
 ミストはカグリエルマに口付けていた。実に楽しそうに濃紫の瞳を細め、頃合いを見て瞼を下ろす。カグリエルマは暫く何が起こったのか理解できずに居たが、正気に戻った時にはその意図をどことなく理解していた。
 そりゃあ、こんなことすればメリアドラスは飛んでくるだろうと…。
 黙って接吻を受けているというのも癪なので、カグリエルマも瞳を閉じた。親愛を表すにしては些か濃厚になるそれに、メフィストはただ衝撃を受けている。ポットから注いだ紅茶がカップを溢れてソーサーに溜まっていた。
「…っ…ふ」
 舌を絡めてお互いの技巧を試すような口付けに、濡れた音が混じる。どちらからともなく甘い吐息が漏れ、危うく本気になりそうな段階になってカグリエルマが瞬間的に離された。
「…う、わ…!」
 後ろから羽交い締めにされるような形で抱き寄せられて、思わず何事かと首を巡らせれば、冷えた深紅の瞳がカグリエルマを見下ろしていた。少なからず怒っているらしい。ぎゅ、と力を込めて抱きしめる彼こそが吸血王だ。
 光すら吸い込む闇色の髪は腰よりも長い。堂々とした長身に引き締まった体躯。冷たさを感じさせるような美貌を持った若い男は今、その血色の両目に怒りを燃やしてミストを見つめていた。
「……いくらお前でもコレに手をだすのは止めてもらおうか、アル」
「おやおや、随分嫌われてしまいましたね」
 対するミストは微苦笑を浮かべているだけで、メリアドラスの怒りを向けられようと一向に気にしては居ないようだ。
 紅茶の大半を零してしまったメフィストが、諦めてトレイを両手に持って出ていった。きっとその選択は賢明であっただろう。
「私の物に手を出すほど飢えているのか性悪。とっととあいつの元にもどったらどうだ」
「言葉が過ぎますよ、お坊ちゃん」
 二人のやり取りに焦ったのはカグリエルマだ。どうにかして仲裁できないものかと、彼らしくも無くオロオロとしていた。
「ほら。カグリエルマが困っているじゃありませんか」
 今までの暴言も気にしていないのか、ミストは美しく笑った。宥める様な、どこかうらやましがる様な。
 メリアドラスは漸く腕の中のカグリエルマをしっかりと見つめた。この数日顔すら見ていなかったと、途端に恋しい想いが溢れてくる。
「……メリー、ごめん…な?」
 呟いた言葉に力は無かった。俺が悪かった、と非を詫びる言葉に、メリアドラスは眉を顰める。一体何を納得したのだろう。ちらりとミストを睨み付ければ、彼は黙って肩を竦めた。カグリエルマは、ミストによって全て聞かされたのだろう。
 全面降伏の構えを見せる愛しい者に、メリアドラスは罪悪感を感じずには居られなかった。元はと言えば何も言わない自分も大いに悪い。
 一度身体を離してお互いに向き合って、
「私も少し神経質になっていたんだろう。頑なに成らずにお前に話して置けば良かった。……すまない」
 メリアドラスも正直に詫びた。するりと腰に腕を回して身体を密着させ、額や頬に口付けを落とす。素直に唇の愛撫を受けるカグリエルマは、安堵したように身体を預けて擦り寄った。
「………後悔、しているか?」
「そんな訳ないだろう…馬鹿」
 人では無くなってしまった事に、後悔しているのか?それはメリアドラスが一番聞きたくても聞けなかった事で。案外即座に否定されてしまい、嬉しいやら愛しいやら。細身の身体を抱きしめた腕に力を入れ、メリアドラスはカグリエルマの顔を覗き込む。
 困ったようなはにかんだ笑みを浮かべる顔に優しく微笑みかけ、甘えるみたいに鼻を擦り寄せてからその唇を啄んだ。笑みの形を作る唇をぺろりと舐め、何度も口付けを繰り返す。 
 膝の上に肘を立てて顔を載せていたミストは、黙って二人の挙動を眺めていた。やはり、元の鞘に収まっている方がいい。その微笑はどこか憂いを含んでいる。
 自分の存在を全く無視して愛を囁くメリアドラスが可笑しく、気が付かないほど夢中になっているカグリエルマが可愛く思えてしまう。羨ましいのもやまやまだが、目の前でこれ以上事が進んでしまっては困るので、
「痴話喧嘩の殆どは、抱き合えってキスでもすれば許し合える物なんですよ」
 誰にともなく呟いた。
 はっ、と気が付いたカグリエルマがメリアドラスから身体を離そうとしたその時、室内の空気がざわりと蠢いた。ランプの明かりを全て奪うような闇が膨れ上がったかと思えば、一瞬後には何もなかったかのような静けさを取り戻す。
 だが、たった少しの変化はメリアドラスとミストの上位魔族には十分だっが。
「抱き合ってキスをすれば、お前の機嫌も直るのか?」
 くつくつと笑う低音の声はメリアドラスにそっくりで、だがこの場の誰もが違うと判っていた。
 唐突に出現した人物は、ミストが身構える間もなくその腰を抱き寄せた。堂々とカウチに座ってミストを腕の中に収めた人物は、メリアドラスと瓜二つの顔をしていた。短い闇色の髪に、同色の瞳。その黒い瞳と軽薄そうな表情、纏う闇の深さの違いが二人を別人だと言わしめている。
「……とっとと離していただけませんか」
 ミストの声色は冷えた物だった。今までの穏やかさとは一変した険悪さに、カグリエルマは興味を覚える。あれだけ柔らかい印象だったミストが、苛立ちを剥き出しにしている。
「つれないな。お前もあの人間を見習って少しはしおらしくしたらどうだ?」
「………貴方ね。自分の行動棚に上げて巫山戯た事を言わないでください。貴方こそ息子を見習ってはどうですか」
 毒を含んだその言葉に、魔王はにやりと笑うばかり。
「どちらでもいい。アル、そいつを連れてさっさとエレボスへ帰ってくれ」
 うんざりとしたメリアドラスに、魔王は方眉を跳ね上げた。
「アル…、だと?お前、どの面下げてその名を呼んでいる」
「私が許してるんですよ。何処かの誰かと違って、メリアドラスは優しいですからね」
「まるで俺に不満があるような言い方だな、アルヴィティエル」
「大ありです。―――…離してください」
 どんどん悪化していきそうな雰囲気に、耐えかねたカグリエルマが口を開いた。一度襲われた事実がある所為か、メリアドラスはその身を離したがらないので黙ってそのままになりながら、
「こんなところで修羅場を見せられても困る。仲直りするんじゃなきゃ、外でやってくれ。外で」
 幾分呆れて呟いた。いい大人がみっともない、と。
 魔王と堕天使はそろってカグリエルマを見つめた。まさか人間が仲介に入ろうなどとは思いもせず、だが魔王はその機を逃さなかった。
「アルヴィティエル。こっちを向け」
「嫌ですよ」
「…アルヴィティエル」
「………」
 ミストの耳元で囁かれる重低音は、酷く優しい響きを持っていた。残忍で冷酷なイメージを拭えない魔王は、こんな声色も使えるのかとメリアドラスは感心する。
「アルヴィティエル」
 三度目の呼びかけの途中で、漸くミストが折れた。ゆっくりと振り返る。すると魔王はやれやれといった風采で、ミストの顎を捉えてすぐにその唇を奪った。角度を変え、より深い口付けになる。濡れた音を響かせて舌を絡めてくる激しさに、ミストは魔王にしがみつく。眉根を寄せて甘い吐息で啼く姿は、随分と扇情的だった。
「やるね…」
 カグリエルマは口笛を吹いて苦笑した。
「馬鹿馬鹿しいな」
 うんざりしたメリアドラスは本心をもらした。
 メリアドラスの気持ちもわからなくはないが、カグリエルマは嬉しかった。恐らく接吻が終わればミストはもう許してしまうだろう。
 結局惚れた方が負けだとわかっているから、苦笑するしかないのだ。惚気るだけ、想いは強いのだから。
 情熱的な口付けを暫く眺めていた二人だが、これだけ見せつけられると居たたまれなくなる。どうした物かとメリアドラスに助けを求めたカグリエルマは、カウチで貪り続けている魔王の手振りがちらりと目に入った。
 愉悦に染まった漆黒の瞳が二人を見つめ、出て行けというように手を数度振っている。カグリエルマは小さく吹きだし、メリアドラスは盛大な溜息を吐きだして大人しく場を譲ることにした。魔王はきっと、二人が側にいようと気にせず情事を見せつけることだろう。いささかそれは願い下げで。
 扉を閉めたメリアドラスは、素早くカグリエルマの唇を奪った。情欲に燃える深紅の瞳が雄弁に物語っていた。
「独り寝が意外と寂しいって知ってた?」
「…ああ。側にお前が居ないと気が狂いそうになるな」
「末期じゃねぇのかそれ」
 声を上げて笑うカグリエルマを愛しく想いながら。
 メリアドラスはとりあえずカグリエルマを連れ、自分の部屋にさっさと戻ってこの数日を埋めて余りあるような濃厚な情事に耽ろうと決意した。

 ―――ついでに、暫くは、客間の異人を意図的に忘れようと決意した。

  

お待たせいたしましたー!
ミストが別人のような気がしますが、いかがでしたでしょう。メリーとノイズがほとんど出てきませんが、美味しいところは全部さらっていってしまいました。
随分と会話が多いきがしないでもないですが…。きっとミストとカグラはいい友達になったとおもいます。
リクエストどうもありがとうございましたー!
2005/4/25

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