Blue nut

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「申し訳ありません、カグリエルマ様」
「気にしないでくれ。それより、俺のことはカグラでいいよ」
 ここはジョウサイアス伯爵邸。
 カグリエルマの元依頼人の娘にあたるルーシンダ・グレンダル嬢は、先の三つ子月夜に吸血鬼に嫁いできた。異種族間駆け落ちである。吸血鬼に仲間入りしたわけではないが、事実上伯爵夫人となったルーシンダは立派な良妻に徹している。光り輝く金髪と、空色の瞳が愛らしい。
 食事も掃除も関係のない吸血鬼だが、その眷属となった人間は基本的に以前の生活を送らなくてはならない。
 カグリエルマは折を見ては彼女の元に尋ねていた。温室育ちの彼女を心配してだった。だがルーシンダも自分の家では学ぶことの無かった料理等を、メフィストに習いに城に来たりを繰り返している。今日カグリエルマはメフィスト手製のマドレーヌを持参して、様子を見に来ていた。
 すると丁度書庫の整理中だったらしく、女手では力不足だろうと快く手伝うことにしたのだ。
「そうはいきませんわ。ベルフォリスト家の方に…」
 ベルフォリスト家は、代々学都アグライアの領主を勤めている家系である。その知名度と美貌は他の都市にまで知れ渡っている程だ。ルーシンダ嬢の父親は、現領主の麾下である。
「君の御両親の教育には感服するものがあるけれど、俺はあの家とはほとんど関係ないから」
 カグリエルマ自身実は直系で、領主の孫であったりするけれど、ほとんど勘当同然のためファミリーとは付き合いがない。
「ですが、あのひともあなた様のことをそう呼んでいらっしゃいますわ」
「ジョウサイアス伯はしょうがないかな…後ろ盾がまあ…うん」
「吸血王様ですわね……」
「まあ、そうなんだがね。君はいいんじゃないかな、俺と立場は変わらないわけだし。何より、俺が君を愛称で呼びたいんだ」
「人の女を口説かないでいただこうか」
 突然の声は、この邸宅の当主ジョウサイアス伯爵である。壮年の紳士である。黒髪は艶やかで吸血王のそれとは異なる。赤茶けた瞳には洗練された紳士の感が漂っていた。
 彼は書庫の奥で分類作業に没頭していた筈だが、人外の聴力で彼らの会話にしっかりと聞耳を立てていた。
「……聞き捨てならん言い方はよしてくれ、伯爵」
「そうよ、サイアス。貴方がいるのに、誰が私を口説くでしょう」
「愛しいルーシー。君の言うことはもっともだが、君は十分に美しい。この男が君を口説いたとしても可笑しくはない」
「まあ…」
 カグリエルマは何も言えず、ただ生ぬるく笑う。語尾にハートマークを見つけたような気がする。目前でラブシーンだけは見たくなかったので、彼は書物の整理を再開した。
 何とも甘ったるい言葉を二三言交わし、彼女たちも仕事に戻ろうとしたその時、
「きゃっ……!!」
 振り向きざま積み上げた書物に足を取られて、ルーシンダはよろけた。体勢を立て直すには服装も位置も悪い。はしごに登りかけていたカグリエルマは、咄嗟に彼女を助けようと手を出した。
 が、ルーシンダの腰を支えたのは他でもない夫でもあり、人間の反射速度などものともしない吸血鬼だった。
 行き場の失ったカグリエルマは、はしごに登りかけていたこともあり、無惨にもルーシンダが倒れる筈だった本の山につっこんでしまったのである。
「あたたたた…」
 恥ずかしさが大半を占める中、カグリエルマは半身を起こした。
「だ、大丈夫ですか!?ごめんなさい、わたくしが躓いたりするからっ」
 ジョウサイアス伯爵を振りきって、ルーシンダは血相変えてカグリエルマをもとに膝を突いた。
「結構頑丈だから大丈夫。君が悪いなんてことは無いから、そんな顔しないでほしいな。どっちかっていうと、最近なまってきた俺の反射神経が恥ずかしいよ。…歳かな」
 冗談めかして、にっこりと笑う。ルーシンダもそれにつられて苦笑を漏らした。伯爵はどう答えたものかと思案しているように眉間にしわを寄せている。
 せめて今度は自分が先に立ち上がり、ルーシンダの手を取ろうと考えていたカグリエルマは左足に力を入れた瞬間、足首に走った激痛に呻いた。
「…カグリエルマ様?」
 訝しがるルーシンダを制して、伯爵が足首に触れた。
「…ぃっ……て…」
 それ以外言葉を発せないカグリエルマを見て、伯爵はさらに眉間のしわを深くする。靴を脱がせて足首を左右に軽くひねり、カグリエルマの様子を見ている。
「捻挫、でしょうな。安静にしていれば、そう長くはかからないだろう」
 軽傷にしてはやけに深刻な声で伯爵は呟いた。
「情けねぇ。本っ当になまったな、俺…。………それにしても、診断が慣れてるな、伯」
「私は以前医者だった。そんなことはいい、それよりも吸血王を―――」
 伯は言いかけて言葉を止めた。
 書庫の入り口の扉が勝手に開いて、そこに長身の陰がさす。足跡すら気配すら感じないのだが、ルーシンダ以外の二人は、そこから誰が来るのかをよく理解していた。
「よぉ」
 扉に現れたのは、青年の外見をした吸血鬼。光すら吸収する漆黒の長い髪と血のように紅い瞳をもった吸血王は、片手を上げたカグリエルマを見つめた。
「何をやっている」
 呆れを含んだその声は、ジョウサイアス伯爵に向けられたものだった。
「申し訳ございません、王よ。私の落ち度です」
 それには答えず、メリアドラスは溜息をついてカグリエルマの元へ寄った。
「なんか、話が読めないんだけど、一体何」
 冷めた空気が漂っている書庫で、ルーシンダは沈鬱な表情をカグリエルマは嫌そうに悪態を付いた。
「貴殿は特別であるということだ。この場に私がいながら、貴殿に怪我を負わせてしまった。監督不行届というやつだ」
 やはり深刻そうな声で。それを聞いたカグリエルマは盛大に呆れ果ててしまった。
「アンタら、俺の親か何かか?保護対象にするのは自分の女だけにしといてくれ。自力で生計を立てられるような男を保護しようなんざ、嫌味以外の何ものでもない」
「……しかし」
「あーのーなぁ、さっきコケそうになったとき、もし彼女じゃなく俺を助けてたら、それこそ俺はぶん殴るぞ?メリー、お前もだ。伯を責めるのはお門違いってもんだぜ。俺が怪我したのは俺の所為であって、誰が悪いわけでもなんでもねぇよ。最後に、もうこの話題は終わりな。コケた俺が一番惨めなのと、ルーシンダ嬢が気に病むだろ」
 捻挫一つで大げさ過ぎだ、とあからさまにじと目で睨むと、メリアドラスは方眉を上げて苦笑した。
「立てるか?」
「微妙なところだな。肩、貸せ」
 左足を軸にして立ち上がろうと、メリアドラスの肩に手をかけたところ、何を思ったかメリアドラスはカグリエルマの両膝の下に腕を入れてそのまま抱え上げた。
「うわっ!降ろせ馬鹿野郎」
「片足で歩けるわけはないだろう」
「だからって……嫌がらせかっ!!」
 何故女性の目の前で抱えられなければならないのか、今まで生きていた年月を振り返っても、これ程むなしい瞬間はなかったとカグリエルマは本気で思った。

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 城に帰ってきたメリアドラスが最初にしたことは、ウィラメットを呼んだことだった。ウィラメットと一緒に来たメフィストはお姫様よろしく抱えられたカグリエルマを見て、
「随分様になっておるのぅ」
 と、隠しもせずに大笑いをしていた。
「ハーレークインの読み過ぎだ」
 反論するカグリエルマも覇気らしい覇気はほとんどない。どうやら観念したようである。反論しても無駄だったため、できるだけ早く降ろしてもらおうと素直に従うことにしたのだ。本当は、抱えられたくない訳ではない。ただ、カグリエルマの視点で言えば、この行為を人前ではやって欲しくないのが心情だ。
 メリアドラスのベットへ降ろされ、靴と靴下を脱がされる。見た目の変化はあまりないが、触れてみると確かに熱を持っていた。
「ドジじゃな」
 ぐうの音も出ないカグリエルマは、だまって無事な足に肘を突いた。
 少しも待たないうちに、ウィラメットは籠を抱えてやってきた。白いものが入った瓶と、包帯、それから何かの実と思われるものが籠の中に入っている。
「今晩、腫れるでしょうねぇ」
 喜々として微笑むウィラメットは、カグリエルマが暴言を吐く前に足首に白いクリームを塗りつけた。皮膚に染み込ませるように擦り込んでいる。
「……っ…」
 痛みと冷たさのため、呻く。
「湿布です。僕が、丹誠込めて、調合した物なので、効き目は保証しますよ」
 一部嫌味ともとれるように強調しながら得意げに言い、器用に包帯を巻いていく。カグリエルマはこの公爵が薬師を職業としていたことを思い出した。
「それと、鎮痛剤を置いておきます。痛みが酷いようなら一回に一粒飲んでください。それと………」
 青い粒の入った小皿を渡しながら、ウィラメットは言い淀んだ。
「それと?」
「なんでもありません」
 にっこりと微笑んだウィラメットは、そのままニヤニヤと笑いながらメフィストに何か耳打ちし、そのまま二人でそそくさと部屋を出ていってしまった。怪しい。この上なく怪しい。
「何なんだ!!」
 狼狽に礼を言うことも忘れたカグリエルマは、そう怒鳴るのが精一杯である。
 メリアドラスはベットの上のけが人を愛でながら、テラスへと続く窓を次々と閉めていった。
「何か欲しい物はないか?」
「いや、特には。強いて言えば丁度読みかけてた本があるから、それを………どうも」
 窓際の椅子の上にあった筈の本は、誰の手も介さずに忽然とカグリエルマの傍に現れた。怪奇現象ではなく、メリアドラスが移動させたのだ。
 体勢を変えようと身体をずらしたカグリエルマは、痛みに呻く。黙っていれば痛みなど無いのに、ちょっとした動きで激痛が走る。
「痛むのか?無理をせずに鎮痛剤を飲んだらどうだ?」
「……う、我慢できないほどでは無いんだが…なんか、ソレさぁ」
「先程のアレは気にしなくてもいい。例の嫌がらせの一環だ」
「……ホントかよ」
 どこか信用仕切れていない表情で、それでも痛みに耐えきれなかったのかカグリエルマは青い実を一粒飲み下した。
 しばらく黙っていたが、特に顕著な異変を感じるわけでもないので、カグリエルマは溜息をついた。どうやら本当に騙されかけていたらしいと一人納得する。
 そんなカグリエルマを見つめていた吸血王は、いたずらを仕掛けた子供のような表情でにやりと笑ったのだった。


 どれぐらい経っただろうか。
 異国の冒険譚だと思っていたものがだんだんと濃厚なラブロマンスに変わってきたころ、カグリエルマは書物から顔を上げた。
 いつもより近くにいるメリアドラスは、同じく書物より顔を上げた。
「痛むか?」
 メリアドラスの心配そうな声に首を振り、カグリエルマは眉間にしわを寄せて手のひらを口元へ持っていった。
 不快、ではない。その逆だった。異変に気付いたメリアドラスは、カグリエルマを自分の方に向かせて顔を上げさせた。
「…………そろそろだな」
 邪悪そうな喜びを隠しもしないメリアドラスの顔を見たカグリエルマは、ようやく自分が未だに騙されていたことを悟ったのだ。
「…きたねぇぞ、お前」
 その声は、どこか艶を帯びていた。
「副作用が無いとは、言っていない」
「っくそ。俺が悪いのか?これまで俺の所為なのかメリアドラス?」
 あきらかに怒りを含んだ声色だが、潤んだ瞳は雄弁だった。
「お前の所為では無いことは確かだ。それに、痛みは無いだろう?」
 全く悪びれもせず、メリアドラスは包帯の上からゆっくりと足首を撫でた。
「……んっ…このっ!!」
 恨めしそうに睨んでも、後の祭りだった。怪我人は労るもののはずなのに、とカグリエルマは歯を食いしばった。やり過ごそうと思えばできそうなくらい浅い欲求なのだが、きっとメリアドラスは許してくれないだろう。
「お前っ!俺が怪我したのがそんなに気にくわないのかっ?!」
 読みかけの本を横に避けて、喜々としてのしかかってくるメリアドラスに非難を浴びせる。
「勿論だとも。」
 だからどうした当たり前だろう、そんな態度だった。
「あー、もう!信じらんねぇ!!」
「……黙れ」
 意地悪そうに微笑んで、メリアドラスは唇を塞いだ。二の句を継ごうとするカグリエルマは、与えられたキスがあまりに熱く、逆に息を呑んだ。怯んだ隙に舌を差し入れて、乱暴にならない程度に激しく口腔を犯す。
 カグリエルマは耐えきれないような、鼻にかかったような甘い吐息を漏らした。力の抜けた四肢を組み敷きながら、メリアドラスはズボンからシャツを引きずり出し、隙間から手のひらを忍び込ませた。撫でるように、楽しむように地肌を嬲る。胸の突起に指をかけると、カグリエルマの肩がはねた。
「……はっ……」
 何度か啄むようなキスを残して、メリアドラスは唇を首へと移す。胸元、腹部に跡を残しながら、ズボンのベルトを外して下着ごと床に放る。
「安心しろ。負担になるような抱き方はしない」
「………アホか」
「何とでも」
 喉の奥で笑って、太股の内側を強く吸う。声にならない悲鳴を上げながら、カグリエルマは喘いだ。
 普段より気遣った、どことなくゆっくりとした優しい愛撫は、逆に焦れてしまう。ここで止められても困る所まで身体の熱を引き上げられ、カグリエルマはシーツを握りしめた。
「………んんっ…!」
 立ち上がりかけた中心を舐め上げられて、素直に声が出る。自分の声に羞恥を感じ、カグリエルマは力の入らない手で唇を押さえた。いつもより自制が聞かないのは、確実にあの青い沈痛剤の所為だ。鎮痛剤で欲情するなど、聞いたことがない。胸中で毒突きながら、荒い吐息を何とか抑えようとがんばった。
「頑固なのは、変わらないのか」
「そうそう変わって…たまるかよ、…ボケ」
 暴言に堪えることのないメリアドラスは、拷問のような緩慢さでゆっくりと舌を這わせていく。時折煽るような音を立てながら、陥落するまでの抵抗を楽しむ。
 痙攣する手のひらはシーツを彷徨って、漆黒の髪ごと握りしめた。
「……ぁ……は……っ…ン!」
 メリアドラスは、溢れた先走りを指に擦り付けて、さらに奥へと指を進める。鎮痛剤のお陰か痛みは走らないとはいえ、カグリエルマは圧迫感に喘いだ。
 顔を隠すように枕に押しつけて、半身をひねる。メリアドラスはそれを利用し、無事な左足の膝裏に手を入れて足を開かせる。濡れた音を立てながら指を増やし、熱を持った体奥をかき混ぜるようにぐるりと撫でた。
 卑猥な粘着音と、直に性感帯を嬲られて、カグリエルマは左右に首を振って枕を握りしめる。慣れるための一連の動作とはいえ、これ程までに煽られ理性を揺さぶる。骨張った長い指がまるで別の生き物のように敏感な粘膜を刷り上げた。快楽に震える喘ぎを心地よく聞きいて、メリアドラスはゆっくりと指を引き抜いた。上着とネクタイを乱暴に脱いでズボンを緩める。左足を抱えるように両足をひろげさせて怒張したものをあてがい、ゆっくりと埋めていった。
「…や…あッ……ぁ…ぅん……!」
 ぴったりと体内に密着したまま、馴染むのを待つ。膝裏の柔らかい肌に犬歯を立てて、押しつけるように腰を進めた。
「ちょっ……辛…ぃ、って…」
 片足だけ上げた体勢に、カグリエルマは掠れた悲鳴を上げた。苦痛による悲鳴ではなく、快楽による甘い悲鳴だ。指よりも太く熱を持った硬い物が前立腺を押し上げて、断続的に声が漏れる。
 浅く挿入し、今度は思い切り引き抜く。それを何度か繰り返し、性感を高めてやる。濡れて充血したそれは、出し入れが繰り返されるたびに淫猥な音を響かせる。ランダムな動きは、カグリエルマに予想のできない快絶を伝える。身体のわきに手をついて、メリアドラスは露わになった胸元に舌を這わせた。
「…ぃ…あ…ぁあっ……はっ…あ…っ…!」
 揺さぶられる律動と呼応するように喘ぎながら、波に流されないようにシーツを固く握りしめる。性感に触れる毎に締め付けられる淫らな体内を強引に掻き乱して、メリアドラスは薄く笑った。
 力の入らないカグリエルマの指は、近くにあったメリアドラスの腕を見つけて強く握りしめる。誘うような嗚咽と一緒に、思い切り爪を立てた。

 もう、金輪際、コイツ等を信用してやるものか。
 カグリエルマは残った理性の欠片で悟ったのだった。

  

2500HITをとっていただいた、風間はづき様に献上!!
「夜国に帰ったメリーとカグラの話で、カグラお姫様だっこ。エッチ有り」が、リクエストでした。
うちのカグラは、間違っても喜んでお姫様だっこはされてやらない、非乙女志向一直線です(笑)。もし乙女話を期待していらっしゃったら申し訳ない!素直に謝りますのことー(何語)。前フリが長くてHシーン少ないですね。御免なさい(TT)。このあとどういう風に○ッたのか(笑)、書いてたんですが、根性がないので削除してしまいました。
なんだか、最近本当に官能用語が頭からスパーンと抜け落ちていて、どうもえちぃくない気がむんむんとただよっています。
私的美学が(何だそれ)あるので、「ああ、これで○○○とか×××とか使えたら苦労しねえのにいいいい!!」とか、他人様には決してわからない悩みを抱えてのたうち回ってみたりみなかったり(どっちだ/笑)。
なんだかあれですね。本編で脇役だった人たちをおもっきり出してみたり、人間だったときの職業が公開されていたりとか、微妙なところが微妙です。ちなみに、メフィスト嬢は三つの王国の一つの王女様でした。
最後に、書き終わってからわかったんですが、blueって「猥褻」のイメージが有るらしいです。一つ勉強になりました(笑)。
御来訪感謝!いつも書き込み有り難うございます!!
2003/6/8

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