この間寄った港で、ノクラフが苺を買ってきた。肉食の龍だが、物好きもいるらしい。ハーフの龍や少数の物好きが、思い思いに苺を食べていた。
「カラス、ちょっと手伝いな」
昼過ぎにノクラフに声をかけられた。
魅朧によって許されている聖霊魔法を使って、カラスは水を凍らせる。
「夕飯の後に、食べようじゃないの」
嬉しそうに、ノクラフが言った。
*
「………おい」
と、魅朧が唸るように、ソファに座るカラスを呼んだ。
「何食ってんだよ」
「ノクラフの自作アイスキャンディ。苺味」
あまったるい匂いはそのせいか。
細い棒についた桃色のアイスを舐めながら、カラスは答えた。
「いる?」
「………いや、いらねぇ」
甘い物は、得意ではない。肉食性の魅朧は、素直にそれを断る。
果物や甘い物が嫌いではないカラスは、嬉しそうにその苺味のアイスを舐める。小さなコップからスプーンで練乳をすくい、アイスの先端に垂らした。
「少し酸っぱい」
言いながら、横に垂れてきた練乳を舐め上げた。そのままぱくりと口に含んで、ちゅ、と濡れた音を立てて吸う。おまけに、指に付いた白いそれを、赤い舌で舐め取った。
何度も練乳をすくっては、舐める。
その仕草から、目を離すことができない。舌の動きを、追ってしまう。自分が知っている動きに重ねて考えると、喉が鳴った。
「うまいか…?」
唾を飲み込んだ音が聞こえないか心配になりながらも、尋ねた。
「うん。何だよ、やっぱりいるのか?食べたそうな顔してるけど」
無邪気に聞き返す。
さっきから、気が気でない。柔らかい淡紅色のそれと白い練乳のコントラストが、全く別の想像を掻き立てる。
「ひとくち、いる?」
なんて銜えながら上目使いで聞いてくるから、こいつはワザとやっているのではないかと勘ぐりたくなる。
「……俺も若いよなぁ」
「は?」
しみじみと呟くと、カラスが怪訝な顔をした。
素早く近付いて、後ろから抱きしめるように腰を引き寄せる。アイスとコップを持っているため、カラスは殆ど抵抗などできない。されるがままになりながらも、別段気にしなかったのか、苺味のそれを囓っている。
「こっちの話」
ぐい、と自分の腰を押しつけると、びくりとカラスが肩を揺らす。
「なっ……!」
「責任、とれよ…?」
「何のっ―――……!!」
その言葉は、途中で塞がれた。
練乳入り苺アイスキャンディ。練乳好きです。ちなみにアイスキャンディは和製英語。それにしても、下品だよキャプテン(笑)。ネタ的には、漫画。
2004/1/26