ピアス

Liwyathan the JET ""short story

「ぜったい嫌だ」
「何今更怖じ気付いてんの。んなもん一瞬で終わるから我慢しろ我慢」
「だって、針だろ、針!もっと何か違うもんかと思った!」
 逃げ腰のカラスを、腕を掴んで止まらせて、魅朧は呆れ混じりに溜息を吐きだした。
 ガラスのさらに乗せられているのは、対のピアス。丸く削られた黒瑪瑙がついた、ほんの小さなもの。
 裁縫に使いそうな細いピンを持った魅朧は、ソレを取り落とさないように気を付けながら、カラスをじっと見つめた。
「怖いなら目を閉じてろ。すぐ終わらせてやるから」
 お前が望んだんだろ、二言はないよな。そうやって言い聞かせると、小綺麗な顔を歪ませながらカラスが漸く観念したのか、小さく頷いた。青磁色の瞳が伏せられる。
「いい子だ」
 瞳を細めて笑いながら、魅朧はカラスの耳に唇を寄せた。
「…ッ…!…何…?」
「なんでもねぇよ」
 傷のない耳朶に舌を這わせ、抱き合う時のような卑猥な愛撫で緩く歯を立てる。ぴくりと肩が跳ね、身動ぎしようとするカラスを押さえつけて、これからする痛みを散らせるように何度も舐め取る。
 息継ぎをするような一瞬の隙をついて。
「…ンッ!」
 細い針を突き刺した。
 確かに貫通していることを、親指に当たる小さな痛みで知る。素早い動きでピアスを指に滑らせ、針と交換するみたいに差し込んだ。キャッチで止めて、片方は終わり。
「反対も、な」
「うー…」
 涙目で睨み付ける姿があんまり可愛くて。
「勃ちそう」
「はぁっ!?」
「はいはい悪かったな、反対もやっちまうぞ」

 罵詈雑言を喚こうとするかわいげのない唇を唇で黙らせて、魅朧はなぜかウキウキとしながらもう一方の耳に舌を這わせた。

  

私は最多で両耳あわせて7穴ありました。そんなこたぁどーでもよいですね。
2004/5/15

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