Q.精霊は自分の子どもに今までの記憶を与えることが世代交代することだと勝手に解釈していたのですが、世代交代するためには子どもを産む(又は産ませる)などをしなければいけないのでしょうか?

***Q&A****© 3a.m.AtomicBird/KISAICHI***

 

 

「えー。こんばんは。聖霊代表のジーベルスです」

「………ペルシャバルです」

「はいはいそこ、嫌そうな顔しない。えーと、先日、礼儀正しいレディより質問をいただきました。今回は本人である俺達が答えようと思います!」

「やけに乗り気ですね…」

「アンタはやけに面倒くさげですね。だってさぁ、あんま、面と向かって聞いてくるひといないじゃん?」

「まあ、私たちが聖霊であるという事実を公表しているわけではないので…」

「そうそう。で、質問の内容だけど」

「『精霊は自分の子どもに今までの記憶を与えることが世代交代することだと勝手に解釈していたのですが、世代交代するためには子どもを産む(又は産ませる)などをしなければいけないのでしょうか?』、だそうです」

「簡単に答えてしまうと、前半が正解で、後半は違う。俺ら聖霊ってのは生殖器官があっても生殖自体はできないから、子供は作れないんだよね」

「ええ。孕まないし孕ませられない。エルフなどの精霊とは別次元の存在なので人間との間にハーフが生まれることもありません」

「そうそう。もともと第三世界じゃなくて、もいっこ上の第四世界の生まれだからホントいうと世代交代ってやつも無かったんだよね。第三世界で住むようになって、人間みたいな身体と世代交代って機能が備わったわけだ」

「第三世界は魔創戦争(※1)以後、死のある世界になりました。人間しかり、精霊しかり。本来不死である聖霊がそのまま不死を全うしてしまうと世界のバランスと倫理が崩れるので、実行するか否かは別として『死』という機能の代わりに世代交代という機能が付加されたのです」

「まー、そういう七面倒くさい問題はこれ以上いいわな。実際問題不死かもしれないけど、死ねる事実があるってのがポイントらしいよ」

「このような世代交代の機能を持っているのは、炎水地風の四聖霊だけです」

「ちなみに、俺とかがよくやってる召喚とかああいうので呼び出した奴等は第三世界の生き物じゃないから、寿命とかは関係ないね」

「では、本題に入りましょう」

「はいよー。俺達精霊が世代交代する時は、自分の力の一部を徐々に移していって入れ替わるみたいにする方法と、消滅してその瞬間に生まれ変わる方法があるんだ」

「ジーベルスは前者ですね。シルフィードなんかは後者が多いです。放埒ですからねあいつらは」

「世代交代するためには記憶を受け継がなきゃいけなくて、その記憶には二つある。魔創戦争んときまで生きてた聖霊を『初代』って言うんだけど、聖霊って何なのか、とかそういう根本的な事が詰まってる初代の記憶が俗に言う『古代の記憶』」

「『古代の記憶』は、ジーベルスの言葉を借りれば生まれ変わるのに一番必要なもの、乃ち聖霊の基本原理です。細胞より細かく刻まれているので改竄すらできません」

「で、もいっこ必要になってくるのが『進行の記憶』。これは一個の個性が持っていた記憶で、受け渡してしまえば自動的に『古代の記憶』の中に格納されちまいます。聖霊ってのは見た目が全く変わらないもんで、自分の前の世代が何やってたか解らないとそれはそれで困るしなぁ」

「そんな簡単に…。両方の記憶をきちんと渡していないと、なんらかの次代になんらかの不具合が生じてくるものなんですよ…」

「俺みたいにな。聖水霊ウンディーネってのはもともと女の身体してるんだけど、俺の前の代のが『進行の記憶』をくれなかった御陰で、俺が男なわけですよ。ウンディーネ的に言えば俺はミスコピー。魔力がゼロ、とかにならなくてよかったよなぁ」

「最初の数十年、手持ちの召喚獣がほとんど見向きもしてくれなかったのでは…?」

「あー、そんなこともあったあった。そのへん不安定になってたけど、基本体力とか男の方があるから便利だよ結構。それに、…」

「それに?」

「レギアが、さ。あのひと、最初から俺に『進行の記憶』を渡すつもりなかったんだよね。だから人間の子供育てるみたいに、爺さん(※2)との間だで俺のこと育ててたんじゃないかな?あんたとこうやって生きてるから、レギアがどうして俺に記憶をくれなかったのかが解った気がするし」

「私と生きて?」

「うん。だってさ…。ほら、あんたにも初代の記憶があるんだから解ると思うんだけど、俺がこうやって一番愛してる人と生きた記憶は、やっぱ、俺だけのもんにしたいと思うんだよな」

「貴方らしいですね。私はきっとこの記憶を受け継がせて、また貴方を捜すと思いますよ」

「じゃ、今度があるなら、俺は待ってればいいのか」

「そうですね。貴方はただ私を待っていればいい。必ず攫ってあげますから」

「と、言うことで!以上質門コーナーでした!」

「…………」

 

途中で本人もわけわからなくなったなんてことはありませにょ!
ありませんよッ!!

20060713

注釈

※1:魔創戦争
第三世界が今の状態になる以前、光の創主と紅蓮の魔神が仲良く世界を治めていたんですが、創主がちょっと暴れていろいろ大変だった戦争。
ちなみに魔神はその後カーマを作り、創主の過去の栄光を信仰しはじめたのがミネディエンスです。おかげで両国仲悪い。

※2:爺ちゃん
ジーベルスの前代レギアノーマの旦那様。人間だったので普通に老いていたので、その人間の死期をさとった数年前あたりから、レギアはジーベルスを作って育ててました。
ジーベルスはレギアの旦那のことを、おっさん、とかじゃんくて爺くらいのときしかしらないんです。