「ぅ…んッ……!」
ゆっくりと押し入られる感覚に、ミストは首を仰け反らせた。露わになったそこに、すかさず唇を押し当てられる。自然密着が深まり、充足に近い圧迫感に声もなく喘いだ。
突然呼び出された夕刻、部屋に着いた途端に抱き上げられて。寝室ではなくてソファの上に放り投げられた。荒々しい行動の割に彼の瞳があまりに優しくて、抵抗する気などすぐに失せた。
不規則に揺さぶられる快楽に身を委ねかけたとき、その場にそぐわぬ電子音が唐突に響いた。ソファが軋む音と、卑猥な粘着音が不意に止まる。
ミストの耳元にじゃれついていたノイズフェラーがやや上体を起こして、ズボンのポケットを漁った。発音源はどうやら携帯電話だったらしい。
どうするのかと濡れた瞳で問えば、彼は一度緩く突き上げてから、あろう事か電話に出てしまった。漆黒の瞳が意地悪く笑んでいる。
「…、ッ…」
声が漏れないように拳を唇に当てた。何を考えているんだ、この人は。
「何の用だ」
『何の用は無いだろ旦那。ルートの件で話あるから店に来るって言ってただろ』
声は男のものだった。話の内容が気にならない訳でもないが、ミストはそれよりも身近な問題で窮地にいる。ノイズフェラーが律動を再開していた。
ムキになって睨み付けるが、あまり効果はなかった。それどころか、わざとある一点を抉るように突き上げてくる。
「っ…ふ……、…!」
声を殺すことが精一杯だ。
聞かれるかもしれないという緊張感が、運悪く作用していつもより敏感になっている。締め付けてしまえば彼が喜んでいることがわかった。いつもよりありありとわかる熱さや固さに、歯を食いしばる。
ミストを組み敷く男は男で、いつもよりきつい内部を存分に楽しんでいた。
『こっち来れないなら俺がそっち行ってもいいけど、旦那今なにしてんの?なんか雑音入るんだけど』
男の声は、あからさまに不審そうだった。そんな男にノイズフェラーは鼻で笑って、
「取り込み中、というやつだ」
『はぁ?』
「聞かせてやろうか?」
とんでもないことを簡単に口にして、ノイズフェラーは携帯電話をミストの顔の横に放り投げた。いくら何でもこれでは本当に聞こえてしまう。
絶対に声を出すまいとしていた手の平は、抵抗も虚しくむしり取られて押さえつけられた。それでも頑なに閉じた唇を熱い舌でこじ開けて、濃厚な口付けで開かせる。
「…ゃ…、は…ぁ…あ……!」
同時に容赦なく突き上げられて、声など抑えられなかった。泣きそうな仕草があまりに可愛くて、手加減など忘れて軟らかい肉を擦り上げる。
堪らず叫びそうになったミストは、目の前にあったノイズフェラーの首筋に噛み付いた。
気が付けば、電話は切れていた。
ありがちだけどこういうネタが大好きです(笑)。
2004/07/22