暫く空を眺めて、もう暫くしてから瞳を閉じた。そのまま背中を抱き込む暖かさに身を委ねていれば、がっちりと腰に巻き付いていた腕が動くのを感じた。
「…?」
臍の下あたりで動き回る腕になにごとかと瞳をあければ、ノイズフェラーの片手がズボンの中に突っ込まれた後だった。
「ちょっ…、何するんですか!」
怒鳴って引き抜こうと手首を掴んでも、腕はビクともしない。アルヴィティエルはさすがに慌てた。
「やめなさいっ…、ノイズ、放し―――」
言葉は、握り込まれた所為で途切れてしまった。衝撃に肩を竦めている間に、自由な方の手でもってズボンをくつろげ、足の間に隙間ができるよう少しばかり引き下ろした。
本当に止めてくれと暴れようにも、足は絡め取られてしまい、ズボンを下ろす仕事を終えた手の平が上着の間に潜り込んできた御陰で逃げることができない。力ではまず勝てることはないのだから勝ち目はなかった。
「や…、嫌で…ッ…あ」
柔らかく力無いものを引きずり出され、長い指が絡み付いてくる。握り込んで上下に竿を扱かれて、アルヴィティエルは泣きそうになった。
甘やかしてやればこの仕打ちか!しかもこんな窓の目の前で、見せつけるように嬲られている事が酷く恥ずかしい。怒りに眩暈がしそうだ。
「いい加減…に…、してくだ…ッ…、…ぅん!」
脇腹を撫でていた指が胸の突起を掠めた。ぷくりと立ち上がったそれを指で押しつぶされて、息を呑む。そこを感じるように覚え込まされているので、先端を爪でくすぐられたり、つまみ上げられると快感が背筋を駆け抜けた。
首筋をさまよっていた唇は、ちゅ、ちゅ、と触れるだけのキスを繰り返す。それだけならば可愛いといえたのに。
胸への刺激と、固さを持ち始めた雄芯をテンポよく擦られて、先端から涙のように先走りが溢れてきた。その途端親指で、ぐり、っと塗り込めるような動きでもって敏感な粘膜を弄られる。
「…ひあッ!…ぁ、ぁ、あ!」
とろとろと蜜が溢れ出てしまえば、もう抵抗すら難しくなった。びくびくと身体を反応させながら、アルヴィティエルは必死に顔を背ける。
暫くいいように嬲られ、ノイズフェラーの指をぐっしょりと濡らす頃には無意識のうちに腰が揺れていた。唇を噛んで喘ぎを抑えようとしても、それすらも媚態に映る。
首筋を舐めたり噛んだりしていたノイズフェラーは唇を弓なりにし、濡れた指で先端の淫液を掬い取り、双球を越えて硬く閉じた秘部に触れた。
「やめっ…、ン…っ…―――んん!」
潤滑剤の代わりに塗り込めて、つぷりと爪先を含まされ、思わず前のめりに息を詰めた瞬間、指の根本まで一気に突き込まれた。衝撃に入り口が閉まり、喰い締める動きを繰り返す。
信じられない、とアルヴィティエルが奥歯を噛みしめても、ノイズフェラーの指は止まることは無かった。さらにそれ以上の淫らがましい感情を引き出してくる。
交合の終わり掛けを思い出させるような早い挿入を繰り返され、呼吸がそれに合わせて切れ切れになる。胸を弄る指は相変わらず。体の中を掻き回す指の動き に、触れられていない中心からひくひくと波打ち、はしたなく透明な雫をこぼし続けた。それが重力に従い張り詰めた双球を濡らし、指を銜え込まされた場所に 辿り着いて吸い込まれていく。
下肢を剥き出しにしているのではなく、緩くくつろがされただけ。二本に増やされた指が卑猥な動きで立てるぐちゅぐちゅという音は、布の中でくぐもって聞こえた。
ぐるりと掻き回され、中で指を曲げられ、内臓を直に嬲られ、ぷくりと熟れた前立腺を立て続けに突き揉まれれば、
「――――――ッ!!」
目の前がスパークした。
自分でも信じられないような甘い声で啼いた気がする。
ひくり、ひくりと余韻で揺れる太股をぼんやり眺めながら、整わぬ荒い呼吸でアルヴィティエルは幾ばくか放心していた。
「…ん…ゃ」
ぬるりと引き抜かれる刺激に声が漏れた。
散々中を乱していた指はいやらしく滑りを帯び、それを確かめるように指を擦り合わせながら、達して力を失った物を絞り出すように数回扱いた。とろりと白 濁の残滓を吐き出させ、さらに衣服へ飛んでしまったまだ暖かい精液も掬いとって、ノイズフェラーはアルヴィティエルの目の前で見せつけるように指を動かし てみせる。
「…しんじ…られな…」
体液でぬらりと光る指に白濁が絡んでいる。自分の欲望の証を示されて、正視できなかった。
ノイズフェラーは嬉しそうにくつりと笑う。
「指だけでイかされたのが?」
「………」
確かにそうだが。それも信じられないが。アルヴィティエルは自分を後ろから羽交い締めにする相手に心底呆れた。目の前にいたら首を絞めてもいい。
性器に触れられず、後ろの刺激だけで陥落させられた。悔しくて、恥ずかしくて。言葉はでないが、目尻が羞恥で赤く染まった。
「指だけじゃ、疼くだろ」
ぐ、と腰にノイズフェラーの猛った物を押しつけられ、耳元で囁かれた。
「このまま俺のを突っ込んで、指じゃ届かないもっと奥まで一杯にされたくないか?」
「……は」
「俺の形を覚えるまで抜いてやる気はねぇからな。溢れるくらい中に出して欲しいだろ?」
立て続けに吹き込まれる卑猥な言葉に、アルヴィティエルはぎゅっと瞳を瞑った。どうせ逃げられる訳はない。必死で気付かないふりをしているが、身体の奥が燻っている。
「なぁ、アルヴィティエル」
一気に饒舌になった魔王は、底意地悪く微笑んだ。
前言撤回。
もう二度と甘やかしてなどやるものか。
アルヴィティエルは泣きそうになりながら晴天に誓った。
オチはない。
2006/01/11