ランプの暖かな灯りの元、忙しない呼吸が収まったベッドの上で、甘やかな吐息と衣擦れの音だけが響いていた。
夜闇を舐めるような情交の、後。
気が狂いそうな快楽の余韻が引かなくて、カグリエルマは虚ろのまま、メリアドラスに触れていた。
上気して仄かに赤い頬をメリアドラスの腹の上に預け、時折甘えるように擦り寄る。左手は彷徨いながら、綺麗に隆起した筋肉をゆっくりとなぞっていた。指の腹で触れるか触れないか、まだ引かぬ汗を愛おしむような仕草。さんざん嬲られ押し開かれた足を、離れがたいと言うように絡めて腰を寄せる。
それはシーツ一枚を二人でわけあって囁き合う、濃厚なひととき。
いつになく大胆な甘え方をするカグリエルマの、汗で張り付き、激情で乱してしまった橙色の髪を梳いてやり、メリアドラスは満足げに唸った。躯は、これ以上なく満足している。
突き立てて、揺さぶりながら、随分と卑猥な言葉を吐かせた。慣れたとはいえ、理性が有れば決してやらないような体位をとらせて、散々に喘がせた。
いい具合に酒と夜に酔ったカグリエルマの痴態を思い出して、くつりと聞こえぬように笑う。
「……メリー?」
そんな気配を読んだのか、カグリエルマは掠れた声で小さく呼んだ。
呼吸でそれに応えてやり、後頭部を優しく撫でてやる。
「…んん……」
その指先すら感じてしまうのか、満足げな吐息が漏れた。伏せめがちの瞳で眼下の肌を眺め、ちらりと出した赤い舌が肌を舐める。子猫がミルクを飲むような、どこか幼くて拙い仕草。彷徨っていた指は、誘うように臍を愛撫して。
「どうした?…カグリエルマ」
足りないのか?と呟けば、ふるふると首が横に振られる。
「……名前」
絡ませた足をするりと密着させ、煽りながら囁く。
「カグリエルマ?」
「ん…。俺のなまえ…」
どこか子供じみていて、メリアドラスは深紅の瞳を細めた。愛する悦びを隠しもせず、あやすように髪を梳き続けて、
「カグリエルマ」
望まれるままに名前を呼んだ。
「そうやって呼ぶの、お前だけなんだぜ…?」
ちゅ、と肌に吸い付きながら、カグリエルマは楽しそうに瞳を細めた。
「みんな、カグラ、としか呼ばせなかった」
お前だけ、特別。
子供が隠し事をこっそり告げるような、そんな無邪気な顔で。
メリアドラスは細い瞳孔をさらに細め、薄い唇を舐めた。カグリエルマの拙い愛撫も心地よかったが、より深い快楽を求める為に、力強く引き寄せた。
濡れた音が漏れだし灯りが消された室内からは、そのうち二匹の獣がお互いを貪る厭らしい音しか聞こえなくなった。
枕の話し。ひねり無くピロートーク。カグラが終わったあとに舐めてたりちょっとエロかったりしたのが書きたかっただけデス…。
メフィとウィラメットは別途として、人間界で「カグリエルマ」と呼び捨てられるのは親代わりのソロモンとギルド長だけでした。
2005/5/23