CHOCOLAT

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「カーラースー!!」
 海原を駆け抜けてゆくスケイリー・ジェット号の中、船室の廊下を歩いていたカラスは、物凄い勢いで走り寄ってくるノクラフに一瞬怯えて後ずさった。
「ちょっと、顔かしなッ…!」
「ぐえっ」
 カラスは蛙が潰されたような声をだした。
 タックルを掛けられるような勢いで、ノクラフはカラスの首をがっちりとホールドすると、そのまま人気のない場所まで引きずって行った。
 戦闘中のように辺りを窺って、誰も近付いてこないことを確認したノクラフは漸く安心して腕の中にいたカラスを解放する。胸の谷間に顔を押しつけられるような形だったので、カラスは酷く焦っていた。勝ち気で乱雑だとはいえ、黙っていればノクラフはブロンドで豊満な肉体を持っている。そんな美女の胸で窒息するのは本望かもしれないが、後が怖い。
 この船で二番目の地位にいる操舵主任の妻なのだ、彼女は。
「カラス、あんたミネディエンスにいたわよね?」
「…ああ」
「じゃあ、カーマの事とかは詳しい?」
「カーマ?カーマ王国か?」
 カラスの育った国は、この世界の中心に位置する大陸の北半分を統治する神聖ミネディエンスという国だ。この大陸の北半分はミネディエンスと対するような、まったく違った国家形成をするカーマ王国という国があった。
 両国は創世の時よりの神を信仰し、だが神と人間と聖霊達が別次元で暮らすきっかけになった魔創戦争以来、お互いに対立を繰り返していた。隣国だというのに、酷く仲の悪い国だ。武力抗争が無いだけまだマシなのだろうが、それすらいつ破られるかわからない、綱渡りの拮抗を保っている。
 当然、
「ミネディエンスから見たカーマの事しか知らないな、俺は」
 カラスが知らないというのも当然だった。ミネディエンスでは、徹底してカーマを嫌っている節がある。古来の戦争での敗北側だから、という簡単な理由では終わらない民族意識が根付いていた。
 ノクラフは、カラスの返事に不満を顕わにした。
「ずっと前、エデューマに停まって居たときに聞いたんだけど、カーマに素敵な習慣があるのよ。有名らしいけど、あんた知らないの?」
「へ…へぇ」
 ノクラフは金色の瞳をきらきらと輝かせながら語る。
 人間の姿ではすっかり成熟した女性の姿をしているが、彼女は彼ら龍族の年齢でいえば漸く成人したくらいの年かさだった。強力な力を持ってはいる彼女だが、きつめの性格に似合わず中身は乙女のようなのだ。
「2月14日は、好きな人にチョコレートをあげるって習慣よ!チョコレートと一緒に愛の告白をしたり、確かめ合ったりするらしいじゃないのさ」
「そういえば、カーマのチョコレート菓子は有名だよな。そういう事情で発達した技術なんだろうか…。老舗の菓子店が売上を競い合ったところから始まったとか聞いたことがあるけど」
「発展経路はどうだっていいの。重要なのは、アタシがエルギーにチョコをあげたいって事と、この船の針路をカーマに向けたいって事なのよ」
 真剣な顔をしながら。一体彼らは何時婚礼したのかわからないが、エルギーとノクラフは荒波も立たない円満夫婦だ。歳の差を人間に換算したときのカラスのショックはこのさい置いておくとして、ノクラフの気持ちはわからなくもない。
「魅朧にコッソリ頼みたいんだけどさ。アタシと魅朧がサシで話す機会って、よく考えたらあんまり無いのよ」
「あぁ…、俺か旦那が居るよな」
「そ。だからまずあんたを懐柔して、魅朧にそれとなく頼んでほしいわけ。かわりに面白い技教えてやるからさ」
「チョコ買いに行きたいから、カーマに向かってくれって?」
 大方エルギーには秘密にしておきたいんだろうなと見当を付けて。
「アタシの所為にしてもいいけど、あんたも買わないのかい?」
「なんで俺が」
「アタシがエルギーに、あんたが魅朧に。何かおかしい?」
「おかしくはないけど、根本的に間違ってると思う。エルギーは知らないけど、魅朧がチョコ食うように見えるか?」
「………」
 そう。肉食動物である龍達の好みは偏っている。甘味などはあまり好みとは言えないようだった。ただ、中にはノクラフのように果実や菓子を好む者も居ないではないのだが。
 カラスの一言に黙り込んだノクラフは、拳を口元にあてて考え込んでしまった。眉間に皺を寄せて唸っている。
「で、でも、ほら、要は気持ちだろ?」
 必死にフォローにまわると、顔を上げたノクラフがカラスのことをじっと見つめた。たじろぐカラスに詰め寄り、にんまりと微笑まれる。
「魅朧の説得、頼んだよ!」
 カラスは深く後悔した。


 月と星の灯りが海面に乱反射を繰り返す深夜、海賊船の船長室はようやく静かになった。先程までベッドの軋む音と、二人分の嬌声が響いていた。今は荒く甘い吐息に満たされていた。
「生きてるか…?」
「ん…、ぅ…」
 汗で色濃くなった灰色の髪を掻き上げてやり、魅朧は未だ肌を泡立たせているカラスに宥めるようなキスを繰り返した。縋り付いてくる腕が背に回り、堪えきれずに爪を立てられた跡がきっと残っている。
「めいろ…、も…や…っ」
 だるいよ、眠たいよ、と態度に表せば、魅朧は喉の奥で笑った。くちっと粘膜を擦り上げて体内を穿つ物を引き抜く。ざわりと淡い快感が背筋を通り抜け、カラスは息を詰めた。
「風呂入ってこれるか?…それとも俺が入れてやろうか?」
「お前と入ると疲れるからヤダ」
「可愛い事言ってると、も一回付き合わせるぞ」
 笑いながら軽口を立てる魅朧だが、その爬虫類に似た瞳はまったく笑っていなかった。
 砕けそうになる身体を何とか叱咤して起き上がったとき、ノクラフとの約束を思い出した。
「なあ、魅朧」
「シーツは替えとくぜ?」
「そうじゃなくて…。頼みたい事があるんだけどさ…」
 未だ裸で触れ合ったままなのは、どこか心許ない。汗が引いて身体が冷えないように、寝具をかけてくれる魅朧の優しさにほだされながら、カラスは上目遣いで強請った。
「カーマに連れてって欲しいんだ」
「カーマ?」
 針路に口出しをしたことがなかったカラスの言葉に、魅朧は眉を寄せた。
「ノクラフのお願いなんだけど、エルギーには内緒にしておいてくれると嬉しい」
「何企んでやがんだ、お前等」
 ニヤニヤと口角を上げる魅朧に、なかなかいい感触を得た。下手に隠すより共犯にしてしまったほうがいい。
「2月14日にチョコレートをあげたいらしいよ」
「何処でそんな話聞いてきやがったんだか」
「エデューマだって言ってた。それに、お前とサシで話す機会が無いって焦れてた。なあ、カーマに行けないか?」
 サイドボードから紙煙草を取りだして火を付けている魅朧は、ぐるぐると唸っていた。
「首都は遠いからいきなりは無理だぞ。港町でデカイっつったらマクミランか、あの辺なら行けなくもない」
「ホントか!?」
「……お前も行きてぇのか」
「行くよ、俺も。ノクラフについて行く。カーマって見たこと無かったんだ」
 子供のように瞳を輝かせて、カラスは魅朧を見つめた。さっきまであんなに乱れて啼いていたのに、この変わり様は少しばかり憎い。
「仕方ねぇな、連れてってやるか」
「え…。魅朧も来るのか?」
 さも当然そうにカラスは尋ねた。正直魅朧が付いてくるというのは考えて無くて困った。
「駄目かよ?」
「……駄目かも」
「『かも』ってなんだよ『かも』って」
 ノクラフはエルギーにチョコレートを買うだろう。その為に行くのだから買わないわけがない。カラスは、その場にいて自分も何かを買おうとするかもしれないと思った。その時、目の前に魅朧が居るのは困るのではないか。
 でも、もともとカーマの行事に詳しかったわけではないので、買わなくても問題はない。魅朧だって、行事好きというわけではないし。
 もやもやした自問自答を繰り返していれば、魅朧が穏やかに笑いながら額に口付けてきた。
「念のためな。あの国は敵対国以外に割とオープンなトコだが、独特でな。お前に警護なんていらんと思うが」
 何も上陸するなとは言ってねぇんだから。
 そう言われてしまえば、カラスも否とは言えなかった。

***

 カーマ王国最南西部にある漁港の一つ、マクミラン。21ある州のなかのひとつで、州都でもあるその場所はカーマの中でも大都市の一つだ。
 海賊船としては最高峰に当たる漆黒の巨船での入港は要らぬ騒動を引き起こすので、この船は今、何の変哲もない真っ白な帆を張っていた。ちょっと大きな商業船というところか。しかし、たかだか偽装であるだけなので、長居は無用だった。
 たいした補給も無かったが、たまの外国ということで船員達はちらほらと酒場あたりに流れている。そんななか、ノクラフとカラスと魅朧の三人もマクミランの街を歩いていた。赤や黒の体毛を持ち、尖った耳をしているカーマ人を見かけると、自分が外人であることが解る。だがミネディエンスでそうであったような、あからさまな好奇の視線が微塵もないことにカラスは気がついた。港町ということもあるだろうが、この国では外国人の人種にあまり気にしないということは、どうやら本当だったようだ。
「なんで魅朧がついてきてんのよ」
 人の感情を読む能力を持っている龍達だが、人間の多い処ではあえて感情の雑音を聞き続けないよう無意識でフィルターをかける。だから、ノクラフとカラスがぼそぼそと話している内容は、魅朧には聞こえていなかった。
「断る理由も無いかなと思って」
「大ありじゃないさ。魅朧の目の前でチョコ買う気なのかい?」
「だから俺、そもそも買おうと思ってな―――」
「喜ぶわよ」
「…は?」
 甘ったるい匂いに満たされた路地をくっついて歩きながら、ノクラフはしたり顔で。
「魅朧が。あいつスゴイ喜ぶわよ、絶対」
「………」
 カラスは困った。魅朧から貰った物は多いが、カラスがなにかをあげるということは皆無に等しい。魅朧が喜ぶというのなら、乗っても良いかもしれない。
 そこまで考えて気がついた。すぐ側に魅朧がいる状況でチョコレートを買えば、きっと彼はすぐに気がつく。にやにやとした顔で付いて来られるのは、些か情けないし恥ずかしい。
「しょうがないわね。いい?カラス。アタシが魅朧つかまえとくから、あんたは別行動しなさいよ。これだけ人がいれば、障壁を張ってもバレはしないから。停泊時間短いんだから、そのまま船に戻っていいわ。大丈夫、アタシが言いくるめてあげるから安心おしよ」
 ウィンクまで付けてくる。
 苦笑で返したカラスを了承と取ったのか、ノクラフは鼻息荒く笑うと、保護者面で背後を歩いていた魅朧に向き直った。
「じゃあ、アタシはこの辺の老舗を片っ端から回るからね」
 腰に手をあてて反り返る彼女に、魅朧は適当な相槌を打ってカラスの側へ行こうとした。だがぐいぐいと腕を取られて、ノクラフに引きずられてしまう。
「あんたはアタシの荷物持ち!」
「待てコラ。旦那相手に買いに来たんじゃねぇのかお前は」
「エルギーの味覚に合いそうなもんを、あんたに聞こうってんじゃないか!ついでにアタシの好きなの買って保存用にしたっていいじゃない」
 龍族としては味覚音痴にあたる彼女は一体どれだけのチョコレートを買う気なのか。黙ってみていたカラスは温く笑った。
 魅朧をがっちりとホールドしたノクラフは、カラスに向かって笑ってみせる。
「カラスは別の店のやつ、頼んだからね!」
「……わかった」
「な…、ちょっと待てカラス…!」
「頑張れよ、魅朧」
 無責任にエールを送って、カラスは人混みに消えていった。短い時間の中で何がいいかと考えながら。
「………」
 置いてけぼりをくらった魅朧は、面白くはなかった。先程から二人で何やら楽しそうに企んでいることは解っていたが、実際行動に移されると嬉しくはない。ふつりと消えてしまったカラスの気配に、魅朧は舌打ちする。
 甘いカカオの香りが漂う店内へ引きずり込まれながら、荒々しく溜息を付いた。そんな魅朧を横目で確認し、ノクラフはからりと笑う。
「あんたが来るからいけないのよ」
「何でだよ」
「好きな相手にチョコを渡すんだから、アンタが居たら買いにくいじゃないのさ!」
 綺麗な包装をされた箱を手に取り、試食をしながら品定めをしているノクラフは得意げだった。
 そんな姿に、魅朧はもう一度長嘆する。やはりカラスが単独行動にでたのは何か企んでいたかららしい。ひとつ気にくわない事があったが、それはまあ後で懲らしめるとしても。やっぱり呆れてしまった。
「アンタがカラスのことを放したがらないのは知ってるけど、こういう時くらい許してあげてよ。それに、どうせアンタ、カラスが欲しそうな物かたっぱしから買ってやろうとか考えてんでしょ?親バカ、孫バカみたいよ?過保護すぎにも程があるってもんね」
 親バカはまだいいが、孫バカには傷付いた。いい加減いい歳だということは自覚しているが、面と向かって指摘されると正直胸が痛い。
 結局魅朧はノクラフの荷物持ちに収まった。

***

 スケイリー・ジェット号は夕方の出入港ラッシュ時の混乱に上手く乗じてマクミラン港から離れた。
 船内ではマクミランで買い漁ってきた色々な物が各所で広げられ、夕食時と相まってそこそこの賑わいを見せていた。船員が楽しそうなのは嬉しいから、とりあえず魅朧の文句は無かった。機嫌はあまりよろしく無かったが。
「魅朧」
 シャワーから上がったばかりのカラスは、濡れた髪をタオルで拭きながら窓際の男を呼んだ。上機嫌とは言えない態度なので、何をしてしまったかと少しばかり脅えてしまう。原因はわからなくもないのだが、そこまで怒らせてしまうとは思わなかった。
 手酌でシャンパンを飲んでいた魅朧は、無表情で振り返った。
「…あのさ、怒ってる?」
「いいや」
「……うそつき」
 さっきまで着ていた上着のポケットを漁り、小箱を取りだした。ベージュ色の包装に濃紺のリボンで留められている。ノクラフと離れてからぎりぎりまで探し回ったチョコレートの箱だった。
「ええと、もう何か色々とバレていると思うけどさ」
「………」
「う。あー…、ごめんな?」
 本気で怒っている訳ではないと思うが、先手を打っておいた方が無難だと判断した。小箱を片手に近寄って、魅朧の足下でしゃがんで見上げた。
 カラスは、ノクラフと別れた丁度そのときに、感情を読み取ってトレースされないよう、気配を消して精神に遮蔽を張った。ただ付いてこられるのが恥ずかしいという理由だったが、魅朧にしてはそれが気に入らないらしい。
 何を考えているかバレバレなのは、こういう時に本当に困る。こっそり何かを企画して驚かす、という事が出来ないのはつまらない。ノクラフに聞いたイベントに乗じて、チョコレートなんて買ってみたりはしたものの、それをあげても魅朧は何とも思ってくれなかったらどうしよう。でも、喜んでくれるかもしれない。そんな女々しいことを考えていた自分が、今更馬鹿馬鹿しくなってきてしまった。
 結局自分がやった事は、魅朧には気に入らないらしいし…。
 カラスは魅朧を見上げたまま、すぅっと身体が冷えていくのを感じた。心と体はどこかで繋がっている。魅朧にこんな目をさせるつもりじゃなかったのに、と考えたらその途端、心に痛みが走って浮かれていた気持ちが冷めてしまった。そうだ、自分は確かに浮かれていたのだ。
 濡れた髪を拭っていたタオルを握りしめ、カラスは奥歯を噛みしめた。
「悪かったよ…」
 探している最中はあれこれ考えて楽しかったのだが、どうやら用済みになったチョコレートは捨ててしまおう。肩を落としたカラスは魅朧を見ないように立ち上がった。
 椅子に沈み込んだ魅朧が全身から力を抜いて、呆れ混じりに長嘆したのは同時だった。
「捨てんな捨てんな。ちゃんと食うから」
 苦笑を浮かべた魅朧は、カラスの腕を引っ張りその身体を膝の上へと引きずり上げた。そのままカラスの腰へ腕を回して引き寄せれば、お互いが密着する。
 風呂上がりの石けんの薫りを吸い込むように鼻先で肌を探り、手を伸ばして頭を撫でてやる。突き刺さるようなカラスの感情を読み取ってしまえば、これ以上虐めるわけにもいかなくなってしまった。
「過保護だってどやされちまったしな、別に怒って無いからそんな泣きそうな顔しなくていい」
「してねぇよ」
「しかし、俺としてはやっぱり、遮蔽まで張られてお前を辿れないのは切ないもんがあるんだが」
 片腕ではカラスを抱いて、もう片手は小箱を器用に空けながら、魅朧は何か企んでいるような瞳でカラスを見上げた。
「ごめんって」
「許してやるから、これ食わせて」
「は?」
 これ、と顎で示されたのはチョコレートの小箱だった。包装が開けられた中身は、仕切りに合わせて6つ程の小さなチョコレートが入っている。
「ば…!」
 馬鹿じゃないか!と叫ぼうとしたカラスは、少年のように嬉しそうに期待する魅朧を目にして言葉を呑み込んだ。
「………っ…」
 ぐっと羞恥を堪え、箱から一粒丸いチョコレートをつまみ出す。恥ずかしくて上がってしまった体温に、表面が溶けてしまうのではないかと焦った。
 茶色くて丸いその天辺には、水晶のような岩塩が乗っている。このまま力を入れれば割れてしまいそうなチョコレート。薄い膜の中にはテキーラが入っているらしい。甘い物が好きではない魅朧でも、ボンボンならば食べれるのではないかと選んできたもの。
 薄く開いた唇の前に持って行くと、ゆっくりとした動きで食された。指を引こうとすれば、咎めるように甘く噛まれてしまう。
「魅朧…ッ…」
 指先を舐めながら、器用にチョコレートを砕いて溶かす。魅朧は口内に拡がったテキーラの味に瞳を細めた。岩塩のアクセントと、樽熟成された滑らかで芳醇な味を舌で感じて、これなら悪くないと嚥下する。
 ちゅる、と音を立てて指を解放してやれば、カラスの目尻と耳が赤く染まっていて可愛かった。
「なかなかイケル」
 誉めてやれば途端に笑顔を見せるから堪らない。魅朧は小箱からもう一つ取り出すと素早く口に入れ、カラスの頭を引き寄せて唇を塞いだ。
「…んんッ」
 咄嗟に逃げ腰になる身体を固定し、顔をずらしてなおも深く貪る。口の中にあるチョコレートを舌でカラスの口腔へ滑り込ませ、押し退けようとする舌と摺り合わせてやれば、表面が融けて呆気なくそれは割れてしまった。
「んぅ…ッ!」
 舌先に感じる痺れるようなアルコールに、カラスの身体がビクリと跳ねる。度数の強い液体を唾液と共に嚥下して、喉を焼くような刺激に息が詰まった。喉が鳴った事で満足したのか魅朧が解放すれば、カラスはへたり込んであまりの強さにけほけほと咳き込んでしまった。
 大半は照れで俯いたまま赤面するカラスを抱きしめて、魅朧は耳元に濡れた唇を寄せた。
「有難うな」
「………うぅー」
 悔しそうに唸るカラスを撫でながら、小箱の中身を摘んで食べる。悪くはないとほくそ笑んだ魅朧は、どうせならそのまま送り主も食べてしまおうと舌なめずりをした。

  

織葉様、444000hit有難うございました!
バレンタインに間に合いませんでした…!く、くやしい!
リクエストは、二種類もらったうちのひとつから。
「姿を消して心に障壁を張って魅朧のプレゼ ントを買いにカラスが町に行くんですが、結局魅朧に見つかって、こそこそしてたお仕置きvを受けつつも、結局最後はプレゼントを渡して、ご機嫌魅朧と嬉しいけどちょっと意地っ張り カラスのラヴラヴな二人v」
という詳細なリクエストをいただいたにもかかわらず、達成率が60%くらいで申し訳ありません…。ラブラブが先行してしまいました。
ちょっと食べ物を粗末にする「オシオキ」を考えたのですが、品がなかったので止めてみたり…!上の口で止めておきました!結果オシオキが無いですか、無いですね…。あわあわ
「エロは!?」というご要望がございましたら、別途付け加えます(ぁ)。喜佐一の80%はシモネタでできています(…)。ということで、どうもありがとうございました!またよろしくお願いいたしますッ!
2006/2/15  ★☆★おまけ★☆★

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