血脈を守る者 6

The Majestic Tumult Era "Stand by BLOOD"

 ヴァリアンテは早足で馬を走らせていた。所属を表す服装ではなく、私服にローブを纏っている。深夜王城を迂回して湖へ向け、林に入った所で城の裏側へ進路を向けた。
 囁きの谷(ウィスパタール)と呼ばれる王家の墓所は、王城の後門から山道を通らなければならない。カーマ王都の地形は山脈と湖に囲まれた天然の要塞になっている。隣国がカーマに攻め入る場合は、山を越えるか湖を渡らなければならないが、山脈にはダークエルフが住み着いているし、湖は中島もなくその巨大さのお陰でリスクが高い。
 山脈はある程度なだらかな斜面が広がっているものの、背の高い樹木が一面を覆っているので昼でも夜のように暗く、また山脈からは鉱山資源の一切が算出されない為、一般人が近付く事はない。
 そして、カーマ建国の祖である『紅蓮の魔神』が、子孫に全てを託して魔界への眠りに沈んだ地でもある。囁きの谷は墓所であると同時に聖地でもあった。だから王城から谷へ抜ける門には、警備兵ではなく軍人が警護に当たっていた。
 今ヴァリアンテが人目を忍んで囁きの谷へ向かうのには理由がある。現剣聖から正式に委任されているとはいえ、全てを開示しての行動ではない。公式にしてしまえば、妨害に遭うことは目に見えているし、良くても足止めを食うだろう。
 だから彼は己の勘と身体に流れるダークエルフの血を頼りに、獣道を進んでいた。
 どれだけ進んだだろうか。しかし懐中時計を取り出してまで確かめる必要は無いと思ったヴァリアンテは、手綱を握りなおした。安堵の溜め息。
 王城の裏手に回って既に谷の入り口まで来ている。城はもう見えない。ヴァリアンテは馬足を戻し、ゆっくりと歩かせる。
 そして、己の魔力を解放し――ようとして、突然現れた人影に慌てた。この自分に気配を悟らせないとは、どれだけの手練れだろうか。敵ではないことは、すぐにわかった。
「遅い。このくそ寒い中、どれだけ待ってたと思う」
「M3、なんで君がここに…」
「魔神に謁見するんだろう?抜け駆けは狡いと思わないか」
 マキシマ・マクミラン、通称M3。小柄な男性だった。光の加減で紅くも見える黒髪は、森の中で闇と同化している。赤紫の瞳と、左顔面に刺青が示す高位魔力に相応しく、彼は金剛石を保持した魔導士だった。
「だから、何故それを知っているんだ」
 連れ戻しに来たのでは無いことを、ヴァリアンテは解っている。M3の性格からそれだけは絶対に無いだろう。呆れと溜め息が半々で、頭が痛い。愛馬が心配そうに嘶いた。
「お前の病室で、剣聖と赤天師団長とカーシュラードがそろって何を話す?」
「…見張っていたのか?」
「個人的な興味で、な」
 方眉を上げたM3は、にやりと笑って見せた。
「積もる話は馬の上でいいだろう?俺はこれ以上歩くのも飛翔魔術を使うのも嫌だからな、疲れる」
 だから、乗せろと片手を上げる。彼に馬がさばける訳もなく、ヴァリアンテは仕方なく自分の前にM3を引き上げた。
「…尻が痛いな。しかも野郎とタンデムなんて、予想以上に気持ち悪い。ヴァリアンテ、お前が歩いて手綱を引けばいいんじゃないか」
「蹴り落とすよ」
「止めてくれ。確実に受け身は取れない」
 威張ることでもないのに偉そうに言い放つM3を前に乗せながら、ヴァリアンテは馬を歩かせた。男の二人乗りなんて、ヴァリアンテも嫌だった。文句を言いたいが、言ってしまえば負けだと理不尽に思いながら。
 ヴァリアンテとM3は、士官学校の同期だった。だが剣士と魔導師ではクラスも授業も違う。学校での接点というより、二人は自習から知り合ったのだ。卒業後、ヴァリアンテは指南役の道へ、M3は魔天師団に進んだ。
 M3は魔天師団の中で、ほぼその頂点にいる程の魔力と魔導を誇っている。しかも攻撃に特化していると言うのだから、これほど戦争に使える人材は居ない。生活の全て、歩行でも食事にさえも魔力を使用してしまえるような器用な一面と、果ては古代魔術まで扱える程の実力を持った彼だが、しかしそれ以外の面ではひとより特化した所というのは無かった。体力は子供や女と同じくらいしか、無いだろう。腕力も。大凡力仕事には向いていない。
 もとよりM3は肉体を鍛える必要が無かった。彼は全カーマ分家の中で常に一位の魔力を保持し続ける、第三分家の長男だ。魔力と精神力を鍛える訓練は、それこそ拷問のように行われてきた。それ以外のことなど、全て従僕に任せればいい。それが許される地位と財力と権を持っていた。
「ま、君のそういう所は嫌いじゃないけれど。それで?何故同行したいんだ」
「魔神に謁見願う為に決まってるだろうが」
「その理由を聞かせてくれと言っているんだ、私は」
 馬上で邪魔にならないように持っているM3の杖が時折足に当たり、若干苛立ちながらヴァリアンテは問い詰めた。
「カーマは本来魔導国家だろう。剣士ばかりがでかい顔をする今を変革するのに良い機会だと思わんか?と言うのは建前で、魔神から古代魔導を引き出したい」
「今でも十分、君は強力な魔導師じゃないか」
「そうだな。俺以上の戦魔導師は世界中探しても滅多にいないだろうな。だが、俺は所詮人間だろう。お前のように魔物の血が入ってるなら別だが、俺は血が濃いというだけだ。己を高める為には何だってするさ」
 M3は魔神に忠誠を誓うとか国政がどうとか言う前に、自分のために魔神に会いたいだけだった。今の王都の状況を知っていてそんなことを言うのだから、利己的にも程がある。自分よりもよほどダークエルフの気質に近いんじゃないだろうかと、ヴァリアンテは長嘆した。
「そんな理由があるからな。俺は魔神の敵にならない。ってことは、お前達の敵にもならない。むしろ役に立つと思うぜ」
「そうじゃなかったら、馬には乗せないけどね」
「魔天は基本的に魔神を推奨するだろう。魔力値を虐げる今の国王のお陰で、魔天師団の肩身が狭くてな」
 王都では口に出来ない様なことを、簡単に言ってのけた。
 現国王は王家直系にもかかわらず、魔力値が高くはなかった。彼は自分の能力に早々見切りをつけ、政の道を邁進した。国家規模で考えても、魔導士より剣士の多い時代ではあったため、どこからも反感はでなかっただろう。カーマには、数世代ごとに能力が偏る事は普通だった。
 だが、彼と歳を離して生まれて来た妹達は、類い希な魔力を秘めていた。王位は正当王家の者が継げばいいのであり、それは能力に準ずる。生まれの順など問題ではない。だが、子供を国王に据えるわけにもいかず、彼は繋ぎの王として在位する事となった。誰も口にしないが、国家の上層はそれをわかっている。
 王は何も言わないが、馬鹿ではない。
 彼は高位魔力を保持している分家の貴族連中と協調するより、国民の支持を取り付けた。ゆっくりと、穏やかに、国民は国王を支持した。彼は低位魔力保持者への保障を厚くし、以前より待遇を向上させた。
「国王へ正面切って挑めば、世論が黙っちゃいない。事実の公開はまだだが、時間の問題だろう?」
「ああ。だから、私は彼に会いに行くんだ」
「全て円滑に済むなんて考えてねぇだろな」
「…思って、ないよ」
「それ聞いて安心したぜ。魔神に傾倒しすぎるのも、今の世では問題だからな」
 そうだろうか。一概に納得できないヴァリアンテは、手綱を引きながら考え込んでしまう。カーマは魔神が創世した国だ。信仰や宗教というものは存在しないが、位置づけ的には魔神こそがカーマの神だと言って過言は無いだろう。それを国民全員が納得するには、体内に流れる血が薄まりすぎたのだろうか。
 だが、その考えでは、カーシュラードの極論と同じ結末に辿り着いてしまう。
「ぐだぐだ考えるのもいいんだが、今はとりあえず早いとこ魔神に会いに行こうぜ。尻が痛ぇんだよ」
 深く息を吸って吐き出したヴァリアンテは、瞬きの後で己の魔力を僅かに解放した。二人乗りで馬を走らせて半時もしないうちに、ヴァリアンテは無数の殺気に気付いた。感じたその一瞬で剣の柄を掴むが、M3が邪魔で抜けなかった。
 魔力の集束。弓のきしむ音。
 一瞬後の攻撃はしかし、M3の放つ魔力によって防がれた。
「…マキシマ、先に言ってよ。もろにくらった所為で吐き気がする」
「蜂の巣になりたかったのか。それは悪いことをしたな」
 こめかみを押さえながら馬を降りたヴァリアンテは、樹影から姿を現した数人の者たちと向き合う。月明かりさえも届かない闇に、褐色の肌と黒衣では視認することが難しい。けれど気配を隠していないから、害意は無いのだ。
「誼姫(ぎひ)の倅がこの時期にカーマ人を連れて何用か」
 正面から、男の声が響いた。ヴァリアンテは姿勢を正し、深く息を吸う。
「紅蓮の魔神に謁見を申し入れに来た」
「お前ひとりなら問題なかろうに、暗愚よな」
 次の声は女だ。
「彼はマクミランの者。魔神の血統というは今確かめられたであろう。黒氏族が刃を向ける相手ではない」
「常時ならば助けよう。現今はそれにない」
 問答は仕方のない事だ。確かにヴァリアンテただ一人であれば、これほど警戒されることは無かった。M3が大人しくしてくれているのは、自分の出番では無いと知っているからか、それともヴァリアンテを己の従僕と同じような扱いで見ているか謎だが、とりあえず場を引っかき回さずにいてくれるので今のところ安心だ。
「私の剣に懸けて、生殺与奪の権を預ける。彼は与する者だ」
 言い切ったヴァリアンテに青年の姿をしたダークエルフがひとり、進み出た。
「魔神の血と、黒十三氏の誇りに懸けて、誓えるか」
「誓おう」
 逡巡もない即答に、ダークエルフ達は武器を納めた。
「付いて来い。紅蓮様がお待ちだ」
 動き出した馬上でM3が欠伸ひとつに隠れて笑った。

 

***

 

 一刻の後、ダークエルフに先導された一行は古びた城に到着した。王家の墓には立ち入ったことのないヴァリアンテは、それがどれほど昔から存在していたのか解らなかった。王子と王女が座するには小さな城だ。
「もともと墓守の屋敷だった筈だが、よくひとが住めるまでにしたもんだ」
 M3が本当に感心しきった声で長嘆し、ダークエルフがその発言にちらりと視線を寄越した。恐らく、闇のエルフ達は随分昔からこの城を管理してきていたのだろう。人間に忘れられた後、いつか主を迎える為に。
 門をくぐり、蝋燭の明かりが満ちたエントランスに入ったところで一度歩みを止めた。武器を持ったダークエルフ達が三々五々散らばり、ヴァリアンテとM3だけがその場に残された。
「調子はどうだ」
 階段の最上部にあるテラスへ姿を現したダークエルフが、柔らかい視線でヴァリアンテを見下ろしていた。
「ギラーメイア」
 紛れもなくヴァリアンテの実母である。久々の拝見で懐かしむと同時に、ヴァマカーラ王女の侍女長めいたことをしている彼女直々の出迎えに戸惑う。
「上がって来なさい。―――魔力ではなく、脚力で」
 ざっと三階分の高さを見上げたM3が魔を使用する前に、ギラーメイアが鋭く注意した。見透かされたことに、と言うより自分の足で登らなければならないことに、M3が堂々と舌打ちで答える。
 むしろ厳戒令下にあると予想できる城の中で魔力を練ろうと言うのだから、M3には恐れ入る。ヴァリアンテは半眼で呆れた。公式の場ではそれなりに威厳も礼儀も持ち合わせているのに、未だにこの同期が何を考えて行動しているのか予測できない。
 登りきった二人を従えて、ギラーメイアは廊下の奥へ歩いた。
「そちらに動きは?」
「赤天は証拠集めに奔走してくれました。黒天は魔神派と静観派に分かれてはいますが、それほど重大な分断ではありません。組織自体は魔天がフォローを行っています」
「その魔天は完全に魔神を推す。魔を使用する者は皆忠誠を誓う用意があると伝えたい。俺は総意だ」
 そんな大変なことをさらっと言ってのけたM3に、ギラーメイアが目を丸くしている。
「第三王家マクミランの長子は、なかなか面白い」
「そりゃ、どうも。クセルクス家の後妻でありながら主人の傍に居着かないあんたより全うな自信があるぜ」
「…M3」
「王族規はカーマ人の規定であって、ダークエルフはその範疇にはいらない。しかし細くとも繋がりがあればこそ、私が姫のお世話をするのに障害が少ないだろう」
 ギラーメイアの姿形を正確に覚えている王族というのは多くはない。あまり人前に姿を見せなかったこともあるし、彼女は王族分家の女主人としての仕事は一切していないのだ。
 その全ては現在の当主であるカラケルサスと戸籍上の長男で継承者のカレンツィードが引き受けている。妻には妻のやるべき事がある、と誇らしげに語るカラケルサスはまさかこうなることを知っていたのだろうか。
「さて」
 突き当たりの扉の前で、彼女は一度足を止めた。
「ここから先の命の保障は致しかねる」
 甘栗色の髪がふわりと波打ち、年若い乙女のような姿。だが、漆黒の瞳は紛れもない戦士のそれだ。
「今のカーマで此処より安全な場所はないと思うがな」
「その点は私も同意したいけれど、元より忠誠を誓いに来たのだから、脅しには乗らないよ、ギラーメイア」
 まるで迷いの無い二人に、ギラーメイアは唇をへの字に曲げた。
「詰まらない餓鬼共よな。命懸けで来たとでも言えば、折檻してやろうかと思ったのに」
「俺らが無事帰城出来なきゃ、困るのは魔神側の住人だろうよ」
 無事に帰る事も仕事のうちだ。
 ただの若造ではないとわかって嬉しいやら味気ないやら、彼女は悪態を付いて扉を開いた。そこが謁見の間だと思っていたわけではないので、通路と階段が見えても二人は驚かなかった。けれど扉を通り抜けた瞬間、何かの結界の中へ侵入したことを、ぴりりと肌で感じた。
「レグノ様と姫は、お前達が此処に来た事を知っている。レグノ様は最初お前達に会うつもりは無いと仰っていたけれど、姫の説得で渋々頷いてくださった」
「それは良かった。伝えなければ意味がない事ばかりなので、拝謁出来なかったら暴れていたかもしれません」
「そういう所は誰に似たのか、文句を言ってやりたい」
「知ってますかギラーメイア。私が母親にそっくりと言われているって」
「それはさぞかし美しく聡明で見識高いんだろうな」
 他人のような会話だがギラーメイアとヴァリアンテは血の繋がった母子だ。不毛な会話を聞きながら、どっちもどっちだとM3は呆れる。
「魔神だけではなく、姫にも目通り叶うんだろうな?」
 口を挟んだM3をちらりと流し見て、ギラーメイアは頷いた。
「姫はいつも魔神と共にある」
「…まさか、二人は恋仲にあった。なんてオチは付かないよな」
「この戯けが。そうであればよかったかもしれないが、そうなる事は絶対にないだろうな。同じカルマヴィアと言え姫は姫であって、魔神の妻ではない」
 意味深な言い回しに疑問符が浮かんだが、意味を問う前に黙れと気配が告げていた。これだけ階段を上れば、城の上部まで辿り着いただろう。小さな広間の正面に、一際目立つ扉が設えてあった。
 両手を扉につけて、押し開く。
「誼姫、只今戻りました」
 優雅に一礼し、ギラーメイアは従えた二人を置き去りにしてしまった。
 取り残されたヴァリアンテとM3は、肌を刺す魔力に一瞬動きを止めてしまった。
 謁見の間と呼ぶよりは、客をもてなすリビングに近い。その一番奥、一人掛けのソファに男女がそれぞれ座っていた。
 二人とも緩く波打つ赤闇色の長い髪を背に垂らし、同色の瞳を持った青年には角が生えていた。青年よりも若い女性の瞳は琥珀色で、縦長の瞳孔が異彩を放っている。
 親衛隊に入って護るはずの姫を確認して、ヴァリアンテは無意識に安堵の溜め息を吐いた。無事と解ってはいたけれど、実際その姿を見て漸く安心した。
 ヴァマカーラは、見知ったヴァリアンテの姿に微笑みかけた。意識不明と聞いていたから心配していたのだ。
 視線での邂逅を待っていてくれたのか、待ちきれなくなったのか、M3が一歩踏み出した。場を満たす濃い魔にさえ物怖じせず、杖を片手に居住まいを正す。
「貴男に問いたい」
 視線はヴァマカーラ姫を素通りし、男の方へと一直線に向けられている。
 本来直属王家への謁見はまず声をかけられてから自らが名乗ることから始まる。彼が誰であるか解っているのにそうしない無礼さを、ヴァマカーラは不審に思った。しかしここは城ではない。今までの地位など、きっと意味はないだろう。可憐な唇をきゅっと結んだ姫は、身じろぎだけでそれ以上の行動は控えた。
「何を」
「貴男はカーマを滅ぼすつもりか否か」
 魔神の第一声などと感動する神経を持ち合わせていないM3は、間髪入れずに質問した。
「私を滅ぼうそうとしないかぎり、否」
 レグナヴィーダは気分を害した訳でもなく、淡々と答えた。
「では、貴男は何者か」
「私は私だ」
「それはレグナヴィーダ・オヴェディタ・カイレーク・ルクレヴァウス=カルマヴィアを名とするカーマ人か、それとも『紅蓮の魔神』と冠される魔族か」
 問答は無表情に行われていて、酷く素っ気ない。けれど重要度は最上位にある。
 レグナヴィーダは初めてM3に視線を合わせ、微かに笑った。今の今まで誰一人問うたことのないものだが、問われることをいつも期待していた。感じたことを答えとし、今まで一度も本人に確認を取らなかった。
 それは畏怖が思いこませたものだ。彼は魔神であるだろうと信じて疑わなかったので、誰一人彼を誰何しなかった。囚われであったのなら、尚更。
「どちらでもあるし、どちらでもない。出生はカーマ人であったかもしれないが、今はもう魂も肉体も魔族と同じだろう」
「では貴男を『紅蓮の魔神』であると認識して問題ないな」
「問題ない」
「ならば全魔天師団員はこれより、マキシマ・マグナス・マクミランの名において『紅蓮の魔神』具現の事実を認め、その魔族への忠誠麾下を宣言する」
 本来名乗ることの無い正式名を宣言し、M3はこつりと杖を床に当てた。初めて耳にしたマクミランの秘名に驚きを隠せないヴァリアンテは、同時に先を越されたと舌打ちしたくなった。
「光以外の全ての聖霊を従え、古の魔すら御せるとは。二千余年の時を経てこれほどの逸材を出現させることができるのだな」
 魔神の興味を勝ち得たM3は、己の能力を正しく理解されて、にやりと口角を上げた。

  

M3のターン。
次から話しが進みますように…
2008/4/18

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